そもそも一人の人間でできるこというのは限られています。逆に言うと、ほとんどの大きいことは、一人でやるのは不可能です。

 私は米国に20年近くいて、日本に帰ってきてとても不思議に思ったことがあります。と言うのは、ビジネスという大きなことに挑戦しているのに、社長さん一人で何でもやろうとしているからです。

 米国では、「餅は餅屋」という発想が根付いています。つまり、あえて苦手なことには自らの時間と労力を費やさず、そのことが得意な専門家に任せるということです。そうすれば、失敗やミスする確率もぐんと下がり、更に正確に早くできますから、結果的には費用対効果、時間対効果がよくなるのです。

 要するに、ビジネスで成功したければ、自分の短所や弱点を早く掴み、それを補ってくれる良きパートナーと組むことです。この場合のパートナーとは、共同経営者、部下、外部アドバイザー、コンサルタントなどです。組む形式はどうでもいいのです。それよりも、実際に自分が弱いところ、苦手なところを効果的に補ってくれるかどうかが大事になります。


 私も米国にいた際、とんでもない大型プロジェクトの仕事をどんどん受けました。受けてくる度にアメリカ人社員が呆れて言いました。

「社長、また大変な仕事引き受けてきたのですか? 勘弁して下さいよ。本当にできなかったら、無責任に引き受けたうちは、訴えられるかも知れないじゃないですか……これは、うちみたいな小さなコンサルティング会社ができるレベルの仕事じゃないんじゃないですか? 多分、KPMG、プライス・ウォーターハウス、マッキンぜー、ボストン・コンサルティングくらいの世界最大級の一流コンサルティング会社がやる仕事ですよ」

 確かに彼の言う通りでした。彼も元々マッキンぜーでトップコンサルタントしていたので、業界のプロとしてその仕事の大変さを心得ています。

 しかし、私はコンサルティング業界に飛び込んでより、簡単にできる仕事には、あまり興味が湧きませんでした。むしろ、一流コンサルティング会社が無理だということで、断るようなチャレンジングな仕事に体当たり取り組むのが、とてもエキサイティングで好きでした。ある種の「不可能を可能にする」コンサルタントなるための醍醐味を感じるのです。

 それで、アメリカ人社員にはいつも同じように言うのです。

「そうかなあ……本当に我々にできないかなあ? 本当に我々だけでできないのであれば、できるパートナーを探して組もう!」

「でも社長、そんな有能なパートナーをどうやって見つけるのですか? 先程、この仕事の期限は、あと2週間しかないって言いましたよね? だとしたら、今頃探して、パートナー候補を見つけたとしても、やってもらうのに、あまりにも時間が少な過ぎやしませんか? パートナー側にも都合ってもんがあるでしょ! それに有能であればある程、予定が詰まっているでしょうし」

「確かに時間はあまりないよね。でも、当って砕けろだ! ごちゃごちゃできない理由議論しているより、できるためにはどうしたらいいかをいっしょに考え、動こうよ! とにかくまず、パートナーを探してみよう」

「わかりました。やってみます。でも、万が一の時は、知りませんよ。依頼先は世界的な企業だから、『最善を尽くしたけどできませんでした。ごめんなさい』では通りませんよ。確実に契約不履行ということで訴えられると思います」

「いいじゃないか。それこそ、コンサルタントとして、これほどスリルとやりがいがあるプロジェクトはめったに得られないし、大手の一流コンサルティング会社が、できないと言っているのだから、もしできたら、我々は一躍業界で認められるよ。凄いことじゃないか!」

「社長がそこまで言うなら、全力でやります! じゃあ、皆で団結して命懸けでやりましょう! まず、手分けして、ベストなパートナーを探しましょう」


 いつも、不可能そうな仕事の依頼の時は、社内ではこんな感じで最初は揉めました。しかし、結局受けた不可能そうな仕事は、すべて可能してきました。

 その成功のカギは、有能な良きパートナーを見つけられたことなのですが、それがそんなに難しいことではないのです。友人に友人をどんどん紹介してもらったら、またその友人が新たな友人を紹介してくれました。そんなことで、間違いなく良きパートナーは見つかるのです。それも、友人か友人の友人が知っていますから、安心してお願いできるプロなのです。