長い人生において最も手ごわい戦いの相手は誰でしょう? それは、自分なのです。

人間は生まれて死ぬまで様々な活動をします。活動の過程の中で、その都度競争相手は出てきます。しかし、その時々に勝った、負けたと一喜一憂していたら、驕れたり落ち込んだりで、振り回されてしまいます。

また、相手との力関係から判断して、どんなに頑張っても勝てない場合と、楽に勝てる場合があるものです。

ですから、相手によって勝負の難易度が変わってくるのです。

私は、かねてから自分の心ほど強い戦いの相手はいないと思ってきました。たまに勝てるのですが、めったにないのです。負けてばかりです。おそらく、頑張って1勝9敗というところでしょう。悲しいかな、それだけ負け続けてきたのです。

もし、今までの自己との戦いにおいて、半分でも勝っていれば、凄い成果が出せていたはずです。それを考えると、自分の心の弱さに、情けなくなります。 

しかし、考え方を変えれば、それが人間の証なのでしょう。

弱いが故に、少しでも強くなって挑戦した時、人間は凄いことをやってのけるものです。私が知る、もしくは学んだ限りにおいて、歴史上それをやってのけた人達がいます。

例えば、マハトマ・ガンジー、坂本竜馬、吉田松陰、ナポレオン・ボナパルト、松下幸之助、サム・ウォルトン、浜口雄幸…… 

もっとおられるとは思いますが、彼らはいずれも弱き自己に挑戦し続けたのです。その生き様を通して、多くの人に感動と希望を与えた人達です。

ある人は言います。彼らは超人的だったと。

私は違うと思います。彼らも元々弱い弱い人間だったのです。でも、普通の人との違いは、その弱き自己に戦いを挑み続けたところではないでしょうか。それも死ぬまでその戦いを続けたのです。

私はよく言います。

「仕事も人生も戦いだ。従って職場は戦場。そして、その戦いの相手は弱き己だ!」と。

 尊敬するある人は、若い頃30歳まで生きられないと医者に言われました。結核を煩っていたからです。今でこそ結核は治るものとされていますが、当時不治の病だったのです。ですから、彼が生き延びたのは、奇跡だったのです。

彼の人生は、たった一人の人と出会ったことから大きく変わりました。その人を師と仰ぎ、亡くなられる最後の最後まで弟子として付ききり、世話をし学び続けました。そして、「人のために生きることが、人間として最も尊い生き方であること」を悟りました。

それから、彼は、人を励まし助けるために、人生を捧げ、弱き自己との壮絶な戦いを始めました。その偉業たるものは、言い尽くせないものがあります。

彼の人生を振り返った時、感動します。

「普通の一人の人間でも、弱き自分と徹底して戦い抜けば、これほどの偉業を成し遂げさせてしまうものか」と。

 そこには壮絶な自己との戦いがあったことでしょう。それを垣間見た時、周りの人達は、感動し、俄然やる気を起こさせられるのです。私もそうでした。

「彼があんなに頑張っているんだ。同じ人間なんだから、自分も少しは頑張ろう!」

 今まで何人の人を、そうやって決意させ、立ち上がらせてきたことか。

 私も彼との出会いによって、人生が大きく変わりました。特に、不可能なことでも、諦めないで挑戦し続ければ、いつか可能になることを学びました。

ですから、彼に勇気とやる気をもらい、勉強、特に国語と英語が「超」苦手でしたが、「国際経営コンサルタント」になるという夢を掲げ、具体的に、米国経営大学院(ビジネス・スクール)で学んだり、本を書きまくるという、自己との戦いを開始したのです。

振り返ると、負ける日ばかりでした。が、20年以上挑戦し続けたら、気がついたらビジネス・スクールを出て「国際経営コンサルタント」なり、毎月本を書いている自分がいました。