私は凡人で終る人と凡人だったけれどもどんどん出世する人との大きな違いの一つは、一見小さいこと、つまり雑用でも真剣にこなせるかどうかだと見ています。
どんなに大物そうに振舞っても、雑用をおろそかにする人は、最後に失敗し失脚します。よく、大物政治家、著名経営者、またやり手の投資家などが、大胆なことをして、世間を騒がします。本人達は、大仕事をして得意満面なのです。が、些細なことをすべて秘書や専門家に任せっきりであったため、後々足元を掬われて、社会的に抹殺されます。厳しい「原因結果の法則」からです。
代表的な例が、田中角栄元総理大臣、堀江貴文前ライブドア社長、”村上ファンド゛で有名になった村上彰容M&Aコンサルティング前社長です。
彼らに共通していることは、勿論、倫理的に問題があったことは間違いないのですが、小さいことは、すべて他人に任せていたことです。そして、一見小さいことなのですが、大事なことを自らチェックすべきであるのに、任せきっていたのです。
人生を生きる上で最も大事な指針の一つに「小事が大事」が挙げられると思います。一流の人は、小事を非常に大事にします。
なぜなら、小事が積もり積もって大事になることを、体験的に理解しているからです。要するに人生において小さいことで凄く苦労してきているのです。
また、大きなことができるのは、誰かが小さいことをコツコツやってくれていること知り、絶えず感謝しているのです。
私の人生のメンターは、コンサートやお祭りなど大きなイベントに参加される度に、裏方の方々をわざわざ呼ばれて、心から感謝の意を表し、各々の大変な準備の努力を大きく称えます。本当に小事を大事にする方なのです。
そのように感謝された裏方の人々は、それ以後一生その方の大ファンになるのです。
その方は、毎日そのように小事、特に人がやってくれている小さい目立たないことを非常に重視します。いつも大々的に取り上げ、その一つひとつのことに報恩感謝されるのです。
大切なことは、どんなに偉くなったとしても、どんなに急がしくても、小事を軽視しないことです。私もそれを実践しなかったために、随分信用失くしたことか。
例えば、大事なクライアントへの提案書のたたき台を自ら作り、何度も何度も修正・追加しました。5回もチェックしたので、最終のチェックは、アシスタントに任せて、本番に臨みました。
ところがです。パソコン上の問題が発生していたため、文章が一行ずつずれてしまいました。従って、内容的にまったく意味をなさない資料となってしまったのです。私が最後に少しだけ、チェックしておけば、それは避けられたのです。正にちょっとした油断でした。
結局そんないい加減な責任者のいる会社には、大事な仕事を任せられないということで、2億円の商談が消えてしまいました。私が油断し、最終チェックは、小事であると判断して、経験の浅いアシスタントに任せきってしまったことから起きた大失敗でした。
今でも思い出す度に本当に心から反省させられます。
普段から「小事が大事」だと、部下に口がすっぱくなるほど言い続けている当人である私が、いざという時に、守れなかったのです。なんて傲慢なのでしょう!
「ローマは一日にして成らず」とは、小さいことをコツコツとやることの大切さを説いたあまりにも有名な言葉です。この大失敗の後、私は、小事であまりやりたくないことが出てくる度に、この言葉を心の中で何度も叫びます。そして、心して全力でやるようにしています。
仕事においても、人生においても、大きなことは、ことの重大さからか、責任の重さからか、ついつい気をつけて、必死で最後までやり抜きます。
しかし、小さいことは、自然と軽視しがちです。でも、実は人生の成功のカギは、小事を大事にすることです。