7月に出版します本のエピローグです。参考になれば幸いです。


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 この本では、プロローグから始まって、私の奇跡ともいえる人生を所々紹介してきました。高校を卒業してから今まで、能力もなかったのに、私はほとんどすべての夢と目標を実現させてきたのです。

 しかし、実は私にも実現できなかった夢があります。

 それは、私が米国で知り合った親友でもあり弟分でもあった20歳(当時)の日系アメリカ人、トーベン・サトウといっしょに経営コンサルティング会社を日本で経営することでした。


 トーベンと出会ったのは、私が米国の経営大学院(ビジネス・スクール)7校を受けて、全校落ちたことを知った直後です。

失意のどん底にいた私が、ワシントン・D・Cにあるジョージ・ワシントン大学主催の起業セミナーに行った時、たまたま私の隣に彼が座っていたのでした。

 あんまり元気のない私が気になったのか、ジロジロ私を見ながら、いきなりジョークを連発してきました。英語があまりできなかった私は、そのジョークがまったくわかりませんでしたが、彼の動作が面白くて、思わず噴出してしまいました。

聞くと彼は日本に憧れていて、一流の経営コンサルタントになることを目標としており、いつかお母さんの故郷、日本に移住して、経営コンサルティング会社を始めることが夢だったのです。

 経営学専攻だった彼は、日本的経営に魅惑されていたようで、出会ってから、私に日本のビジネスについて、会う毎に質問攻めにしてくるのです。

 彼と私は、同じ職業を目指していたこともあり、非常に仲良しになりました。

当時、私は貧乏大学院浪人生で、車がなかったことから、学生で比較的時間があった彼は、少しでも私の役に立つならばということで、ほとんど毎日私の運転手をしてくれました。私は今まで生きてきて、彼ほど純粋で優しい人に会ったことがありません。とても、アメリカ人であることが信じられませんでした。

 私より2歳年下ということもあり、彼はある時突然私の弟になりたいと言い出してきました。私もかねてから弟分が欲しかったので、すぐに兄弟分になりました。

 そうこうするうちに、私は、ニューヨークにある国際会計・経営コンサルティング会社、KPMGピート・マーウィックに、奇跡的に就職が決まり、彼とは離れ離れになりました。

 ワシントンD・Cからニューヨークに発つ前の晩に、彼と私は朝まで泣きながら飲み明かしました。いつかお互い力をつけて、日本でいっしょに経営コンサルティング会社を経営することを固く固く近いました。

 私がニューヨークに移ってからも、彼は弟分として毎日、その日一日に起こったことを報告するためと私の状況を知るために、私に電話してきました。

 ところが、ある時から、彼より電話がまったくかかってこなくなったのです。私は毎日仕事で超忙しかったこともあり、彼も勉強で忙しくなったのだろうと勝手に思い込み、あえて私の方から連絡しませんでした。

 ある時、私はニューヨークのマンハッタン内にある、住んでいたアパートに帰ったところ、トーベンのお父さんから宅急便が届いていました。その中にはお父さんからの手紙とトーベンの事業計画書が入っていました。

 手紙を読んで私は愕然としました。彼が交通事故で亡くなったことが書かれていたのです。

そして、その事業計画書は、彼が前々から日本で経営コンサルタント業をするために、準備していた事業計画書だったのです。

私は泣けて泣けて仕方がありませんでした。

 本当の兄弟以上に慕いあっていた彼と私でした。私はこんなに分かり合える人が世の中に、しかも人種が違う人にいたのかと、初めて会った時から、感動していたのです。彼といっしょに将来日本で会社をやるのは、私の夢でもあったのです。

 しかし、もうその夢は見果てぬ夢のままで終わってしまいました。しかし今でも、もし生まれ変わったら、もう一度彼と出会って、事業をいっしょにやりたいと思っています。できれば、その時は本当の兄弟として。

 でも、トーベンと出会えて良かったです。彼のお陰で、彼が果たせなかった夢を、絶対に果たす決意ができたのです。

今でも、一人になると彼のことを思い出します。話しかけたりもします。

「トーベン、ほら君が夢にまで見た経営コンサルティング会社を僕は今日本でやってるよ! 来世では、いっしょにやろうね!」と。


 高校卒業以来、ここまでの私の人生は、不可能を可能にしてきたものでした。しかし、それは、生きていたからできたのです。トーベンのように社会に出る前に、亡くなってしまったら、可能性はゼロになっていたことでしょう。

 逆に生きていれば、可能性はゼロにはならないとも言えるのです。ですから、これからも、私は、「一流のコンサルタントになる」というトーベンにはもうゼロになってしまったけれども、私にはゼロでない夢実現の可能性に賭けていきます。例え、それが今でも無理そうに見えたとしても。フォレスト・ガンプのように。


「一流のコンサルタントになる」ための一貫として、「仕事と人生を成功させるための本質」について前々から書いてみたいと思っていました。

 そんな折、拙著「あたりまえだけどなかなかできない仕事のルール」(明日香出版社)を読んで頂いた株式会社インデックス・コミュニケーションズ書籍企画編集部の正満悠子さんから、多くの人の心に響く、実用とエンターテイメントの融合を目指したユニークな書籍作りをということで、執筆の依頼を頂きました。

 特に、私の話を聞いて頂いた後、「仕事」と「人生相談」を軸にした、より仕事の本質にせまった内容の本を作ることを賛同頂きましたので、執筆をお受けすることにしました。


 私は、トーベン同様人助けが大好きです!

その中でも人生相談に乗り、同苦・激励することが生きがいなのです。ですから、人の相談に乗り助けることを仕事にするコンサルタント業を、ライフワークとして選びました。たぶん、私がこの世に生まれてきた使命は、金儲けをするためでも、有名になるためでもなく、人助けのためだと思っています。今となっては、トーベンの魂が私に乗り移っているのかも知れません。

 従って、この本の目的も、読んで頂いた方々の一人でも多くの方に、感動、勇気、希望、そしてやる気を得てもらうことです。こればかりは、読者である皆さんの判断を仰がなければなりませんので、ぜひご意見を頂きたいと心から願う次第です。


 私は、人に偉そうなことを言うのが苦手です。なぜなら、人に偉そうなことを言えるだけの能力もありませんし、人に誇れることもしてきていないからです。

今でも毎日、本当に弱い自分との戦いで明け暮れています。負けてばっかりです。ですので、この本は自分自身への戒めの意味でも書きました。本書を読んで弱い私といっしょに自己に挑戦して頂ければ幸いです。