人間性が高まると本物の人脈が増えることをご存知でしょうか? これを検証することは、それほど難しいことではありません。

あなたの周りに「この人は人間的に立派だ!」という人がいたら、その人の人脈を調べてみて下さい。素晴らしい人脈をお持ちだと思います。

 本物の人脈とは、有名人とか、実力者とか、お金持ちとかの意味ではなく、心から信頼され、尊敬されている関係なのです。要するに、その人のためには、一肌も二肌も喜んで脱ぐくらい親しく深い信頼関係になっているのです。

 あなたの周りに、何人そのような人がいますか? たぶん意外と少ないはずです。人によっては、ゼロということもあるでしょう。

 人間性が高まると不思議とそんな本物の人脈が増えていくものです。

 私の知っている米国の組織のリーダーで、人間性抜群の素晴らしい人がいます。彼の名は、トム・ヘンダーソン。トムのためなら、なんでもしたいと思っている人達が、いっぱいいるのです。

 それを知って最初は不思議に思いました。

同じようなことをしているのに、トムは数え切れないほどのファンがいるのに、トム以外はそこまでは人気はありません。勿論、トム以外の人達が、人間的に問題があるわけではまったくないのです。むしろ、トム以外の人達も、素晴らしい人格者です。ただ、トムだけがずば抜けているのです。

 別に頭がいいわけでも、良家に育ったわけでも、お金持ちでもありません。まったく逆です。貧しい家庭に生まれ、高等教育もろくに受けられなかったのです。

 そして、小さい時は病弱で、20歳まで生きられないだろうと医者に言われていたそうです。幼少の頃に、両親と兄弟を亡くし、早くして丁稚奉公を始めたのです。つまり「苦労の人」です。

ですから、小さい頃は、何度も自殺を考えたそうです。でも、幼い妹さん達を養い育てていかなければならないという責任感から、妹さん達が、立派な大人として育つまで頑張ろうと決意しました。それで、複数の仕事を抱え、昼も夜も歯を食い縛って必死に働いて働いて働き続けたそうです。

 また、トムは20代の頃、他人が侵した犯罪なのに人違いで捕まり、1年近く牢獄に入れられてしまったのです。

 そんなことで、トムは、20代で既に、両親・兄弟との死別、死をも覚悟しなければならない重病、無実の罪での投獄、友人のためにほぼ無給で手伝っていた会社が倒産しジョブレス兼ホームレス等々、つまり世の中で起こる最悪の苦難を一通り経験したのでした。

 通常なら、自分の運命を呪い、捻くれるのでしょうが、彼はまったく違いました。

 それだけ、人生での苦労をしたため、同じような辛い経験を誰にもさせたくないと思ったのです。自分自身が生きていくのにやっとであるのに、周りで悩んでいる人の相談に乗りまくり、激励・手助けをやり続けたのです。

 お世話になった人々は、実はトムが精神的にも体力的にも経済的にもほとんど余裕がないのに、必死になって皆を助けていたことを後で知りました。長年トムはそんな風にお世話を続けていましたので、支援した人の数は、何百となったそうです。

 トムにお世話になったほとんどの人は、そのお陰で敗者復活を果たし、それぞれの道で頑張っているとのことです。

その人達は、トムのためならなんでもやると決めているそうです。恩返しの印として、社会的に力をつけることを決意し、何人かは弁護士、検事、判事、公認会計士、政府官僚、医者、大学教授、経営者、政治家、ジャーナリストなどになり、社会で大活躍をしているのです。

 ですから、トムには凄い親衛隊ができあがったのです。今後トムに不幸なことがあれば、その親衛隊が命懸けで守ることでしょう。

 トムと連絡が途絶えて5年以上経ちます。

本物の人脈の凄さを物語るこれ以上の事実を私は知りません。また、本物の人脈で大事なことは、「利他の精神」、要するに、利己主義から脱却し、他人を徹底的に応援することであるのを、トムは教えてくれました。