昔新入社員だった頃、能力のなさに悩み続けました。

何をやっても、ミスや失敗ばかりするのです。却って、私が仕事をすれば、いつも間違えるため、上司や先輩の仕事を増やして迷惑をかけてばかりいたのです。

 ですから、怒られっぱなしでした。

「こら、浜口! 余計なことするな! 俺達の邪魔をする気か!」「何回言ったらわかるんだよ! 小学生じゃないんだぞ! もういい、何もしないで座ってろー」

 ひどい時は、5分おきぐらいに、こんな風に怒鳴られるのです。短気な先輩は、灰皿やホッチキスを平気で投げつけます。

そこまで怒られると、私には基本的な能力が、あまりにもなさ過ぎるのではないかと、悩み苦しみました。

 ある時、仕事のできる先輩の前で、つい溜息をついてしまいました。

「先輩はいいですよね! 入社以来ガンガン仕事ができ、しっかり成果が出せて……僕なんかは、何やってもドジってばかりで……皆に厭きられています。これ以上続けていると、皆さんに申し訳ないので、辞めたほうがいいような気がしてきました」

 聞いた瞬間、先輩の顔色が変わりました。

「何言ってるんだ、バカヤロー まだ入社して1年も経っていないのに、よくも言うな! もし、お前と俺が、同じくらい仕事ができたら、とんでもないことだよ。何のための経験だよ。いいか、俺はこの会社にもう10年以上いるんだぞ! お前よりかなり仕事ができて当たり前だよ! そうでなかったら、俺の今まで10年以上の必死の努力は何だったんだ! 仕事をなめるなよ! いいか、経験というものは、とてつもない能力をつけさせてくれるんだ。また、経験を積むから、能力が生まれるんだよ。経験をバカにすんな! 弱音吐くのは、まだ10年早いぞ」

「経験が能力を生む」という先輩のその言葉は、その後、私は一生忘れられませんでした。なぜなら、私は能力が著しく劣っていたので、何をしても能力がつかない気がして、何もする気が段々なくなっていたからです。その言葉で救われたのです。

「そうか。とにかく経験をしっかり積もう! まず、10年頑張ろう! 10年経ったら自分の能力を評価しよう」と。