米国にいた時、縁あって、米国有数の起業家で大富豪でもあるアメリカ人の顧問を5年ほどやらせて頂きました。彼の名は、ロバート・デッドマンといいます。

彼は、世界最大級のリゾート施設(主にゴルフ場)運営会社「クラブ・コーポ・インタ

ーナショナル」(CCI)の創業者・元CEOです。

デッドマン氏は、クリントン前大統領同様、アーカンソー州の貧しい家庭に生まれました。そのため、苦学してロースクール(法律大学院)を出て、不動産・税務専門弁護士になった人です。

クライアントの不動産取引をお手伝いしているうちに、たまたま破格の安さということでテキサス州ダラス郊外にあるゴルフ場を買収することになったことから、CCIを創業したのです。

CCIは「ゴルフ業界のIBM」と言う異名を持つほど短期間で巨大企業へと成長しました。

日本企業が米国で所有するゴルフ場やリゾート施設を買収したいという理由で、デッドマン氏より買収交渉の支援要請受け、私は顧問に就任することになりました。

その後、CCIは、日本企業との合弁でゴルフ場開発を行いましたが、計画通りなかなか上手くいきませんでした。最高責任者ということで、その責任を追及され、デッドマン氏は、その日本企業の社長から告訴されたのです。

5年間の法廷闘争となり、私も、デッドマン氏の自宅か事務所に、顧問弁護士と防衛戦略・策を話し合うため、毎日通うはめになりました。

ビジネス慣習を含め、日本的なやり方が分かってもらえず、その顧問弁護士と私が絶えず激論をかわす中で、いつもジョークを言いながら場を和ましてくれたのが、デッドマン氏でした。彼のあの冷静さには、いつも頭が下がる思いでした。

デッドマン氏の凄いところは、法的には勝てることがわかっていながら、また訴えてきたのは相手にもかかわらず、かつてのビジネスパートナーでお世話になったということで、私や顧問弁護士の反対を押し切って相手にお願いして和解を申し入れたのです。

そして、和解交渉のその日、通訳兼交渉代理人をするはずの私を尻目に、相手に要求されるまま、深々と土下座をしたのでした。

私はそれを見て涙が出ました。

米国を代表する大富豪であり、世界のCCIを短期間で創り上げた大経営者デッドマン氏です。業界では、神様とも言われていた彼が、日本の中堅企業の社長に土下座しろと言われ、いとも簡単に深々と土下座してしまったのです。相手を立てるため、プライドを完全に捨てた勇気と誠意ある行動でした。

亡くなる前に、数々の大学や病院や慈善事業団体に計1000億円以上を寄付した人でもあります。デッドマン氏のダイナミックな人生は、私含め彼をよく知る多くの人に感動を与えたに違いありません。

私は彼から多くを学びました。

特に学んだことは、人生に一番大事な能力です。それは、勇気と誠意を、いつでも、どこでも、誰に対しても出せるだけの大きな人間力です。