悩みのない人間はいないのではないでしょうか。どんな大金持ちでも、有名人でも、実力者も他人には知られたくない深刻な悩みがあるものです。
20年近く米国にいたお陰で、世界的な大富豪、大企業の経営者、有名な学者、大物政治家などとお付き合いするチャンスを頂きました。その方々とのエピソードは、「不可能を可能にする成功力」(第二海援隊刊)で紹介していますので、あえてここでは省かせて頂きます。
彼らとのお付き合いを通して、一つ気づいたことがあります。
あれだけお金や名声を得た方々でも、毎日大変悩み葛藤していることでした。個人的に親しくなって、自宅にもしょっちゅうお邪魔することになったので、知り得たことなのですが、世間ではまったく知られていない問題と悩みがほとんどです。
却って、普通の人であれば、悩まなくてもいいことでも悩まされています。傍から見ているとお気の毒なくらいでした。そのような立場になったからの悩みなのです。
他人から見るとすべてを得て幸せそうで、何の悩みもなさそうなのです。現実はまったく逆です。お金を余分に持ってしまったがための悩み、有名になってしまったための悩みが沢山あるのです。
要は、人間である以上誰でも悩みを抱えているものです。悩みのない人は一人もいないとも言えます。
大学生の時に、講演会に参加していたら、一人の講演者が言いました。
「大いに悩もう!」と。
講演会終了後、その方を捕まえて聞きました。
「先生、何ででしょうか? 悩まなくて済むのであるなら、悩まない方がいいと思いますが……」
「悩まなくていいことで、わざわざ問題視して悩む必要ありません。しかし、悩まなければならない問題は、逃げずに真正面から取り組んで悩みながら、解決に向けて努力すべきです」
「では、悩まなければならない問題とそうでない問題は、どうやって区別するべきなのでしょうか?」
「私のケースでは、自分以外の人を困らせたり迷惑がかかったりすることは、とても悩みます。例えそれが小さいことでも無視できません。早急に解決しなければ、その迷惑の度合いが大きくなったり、犠牲者が増えたりする可能性があることから、とても心配になります」
「それはとても苦しいことだと思います。ただ、先生は先ほど、ご講演で『大いに悩もう!』とおっしゃいましたが、それは即ち『大いに心配し苦しみましょう!』ということなのでしょうか?」
「苦しむかどうかは、その人次第ですが、大事な問題であれば悩むべきです。悩まないということは、真面目に考えていないことですから、いい加減にしていることと同じになります。そうすると、問題は更に悪化するでしょう。そうなると、とても解決できる問題でなくなるので、逃げるしか方法がなくなるのです。こんな無責任なことはないですね!」
「大事な問題であれば、解決のために大いに悩むべきだということですね。それでも、普通の人は悩むことが好きではないと思うので、悩まなくていいのであれば、悩みたくないと思いますが……」
「何度も言いますが、大いに悩むべきです。一昔前に流行った言葉で『みんな悩んで大きくなった』というのがありました。正にその通りで、人間は悩むから成長できるのです。逆に悩まない人間は成長しませんから、人間性を高めることはできません」
「一般的には、悩むことはあまりよく思われていませんが、悩むことは人間にとって必要なことなのですね!」
「そうです! 自分が悩み苦労するから、人の悩みや苦労もわかるのです。そして、同情・同苦できて、激励・応援しようとする気にもなれるのです。同じような悩みで辛かったことを思い出して。それは人間として最も崇高な行動だと思います」
この方と出会ってから、私も大いに悩むようにしてきました。
実感として、悩むことそのものが大事ではなく、悩んだ結果とる行動、つまりプロセスがもっと大事だと思いました。
私の場合、勿論まだまだ欠点だらけですが、乗り越えようとするその真剣かつ前向きな行動が、自分を成長させてくれたようです。