一人ひとりとの対話の大切さは、既に説明させて頂きました。ところが、先日、講演会で対話の大切さを何度も強調したところ、次の質問を受けました。

「対話の大切さは、前々からわかっていたので、対話の努力はしてきているのですが、なかなか中身のあるいい対話ができないのです。どうしたら、いい対話ができますか?」

 実は、私もそのことがわからなくて、ある時、尊敬するリーダーに質問したことがあります。彼は次のように答えてくれました。


「対話に技術は入りません。講演と違って技術的に話をしようとすると、理屈っぽくなって、却って機械的なやり取りになってしまいます。そうなると、人の心を動かすことなど到底できません」

「それでは、対話に必要なことは何でしょうか?」

「対話に必要なことは、相手を尊重し、一生懸命聞くことです。また、あなたのその真剣な姿勢を相手にわかってもらうことです。言葉の表面的な意味ではなく、その裏にある本意を理解することです」

「なるほど、自分が話すのではなく、相手が言うことを、敬意を持って真剣に聞くことが基本なのですね。それでは、対話を成功させるためのポイントってありますか?」

「何よりも大事なのが、誠意です。言葉のやり取りの中で、誠意は必ず伝わります。逆に誠意がなければ、相手の心も開かないので、本音の話はできません。そして、単なる話し合いに終わらせず、徹底して激励し、その結果として、やる気を起こさせるようにすることです」

「真剣に相手のことを思っていれば、誠意は自然と持てると思います。しかし、激励したり、やる気を起こさせたりするのは、もし、こちらに人間的な力がなければ、とても難しいと思いますが、どうしたらできますか?」

「それは、違います。本当に相手のことを思っていれば、激励することも、やる気を起こさせることもできるはずです。なぜなら、相手があなたと対話したい本意は、究極的には激励ややる気を起こさせてほしいからなのです。意識しているか、無意識なのかは別として、相手はそれを待っているのです。例え、あなたが年下であっても、また能力的にも相手より劣っていたとしても、相手が落ち込んでいたり、自信を失くしかかっていたりしたら、何とかしてあげたいと思うはずです。その気持ちを持ち、それを遠慮することなく、ストーとに伝えたらいいのです。心があれば、時間の問題でその気持ちはしっかり伝わります」

「わかりました。その場合、例えばどんな言葉をかければ元気になってもらえるのでしょうか?」

「本当に元気を出してもらいたいと思っていれば、自然に出てくるはずです。言葉は、熱意やハートがあれば、なんでもいいのです。特に気のきいた言葉でなくても。本当に心配していて、よくなってもらいたいという心が伝わることが大事ですから。『先輩、頑張って下さい。僕にできることがありましたら、何でもしますから』とか『部長、元気出して下さい。部長が元気ないと、我々まで落ち込んじゃいます。我々も部長といっしょに一生懸命努力しますから、部長も今まで通りやって下さい。どこまでも付いて行きますから』などいくらでも言えるでしょう」


 確かに本音で相手が自分のことを心配し、元気になってもらいたいと思っていれば、何を言われても、心の温かさは、自然に伝わってきますよね!

ですから、いいことを言おうなんて構えないで、どうしたら相手が心を開き、元気に頑張ってもらえるようになるかを、話を聞きながらいっしょに同苦し乗り越えていこうという仲間意識が必要ですね。