私は、21世紀の企業経営において、IR(投資家向けへの公報)活動ぐらい大事なものはないと思っている。なぜなら、IR活動は、対外的で継続的な理解と支援を取り付けるだけでなく、自社を客観的に見つめ直すのに有効な手段だと思うからだ。

IRでは、不思議なもので、どんなに過去に業績を上げたところで、なぜそうなったかを論理的かつ客観的に説明できなければ、評価されないのだ。

つまり、経営はギャンブルと違うので、たまたま結果的にいい業績になったことは、評価されない。なぜなら、将来伸びる理由がないから、返って不安になるからだ。

また、多少業績が悪くても、将来に繋げるための、先行投資やしかけであることが、IRを通じて本音で語りかければ、時間の問題で理解してもらえ、評価も高くなる。

なので、IRでは、どんなに技術的に駆使しても、すぐばれる。ないものはないからだ。誤魔化しは利かず、ありのままを語るしかない。IRでの最高の戦略は、真実を正しくスピーディーに伝える誠実さだ。

 残念ながら、その誠実なIRの大切さを認識し、実践している企業が、上場したところも含めてあまりにも少ないのが実態だ。それだけに、21世紀に生き残る企業は、本当にIR力に長けているところのみだと私は見ている。

IR力は、何も難しいことを要求しているのではない。まず、実績ありきで、その実績を持って、将来の夢や目標を、具体的かつ客観的に、行動計画として語ればいいだけだ。何も、複雑に考える必要はまったくないのだ。

私がかかわった企業又は経営者で、裏表を近くで見ていて、現時点で抜群のIR力があるところを次に紹介しておきたい。

 i―cf、オンファンタジー、イーアクセス、伊藤園、エスケイジャパン、エン・ジャパン、ザインエレクトロニクス、ソフトバンク、ソフトブレーン、第二海援隊、パソナ、フォーバル、ブックオフ、ユニバーサルホーム、WOWOW、ワタミ等々。

 これらの企業には、共通点がある。

 経営者が誠実で、最新の経営内容をありのまま公表することだ。それによってどれだけ「ステークホルダー」が安心し、高く評価するか。彼らは、「IR力=企業の命」であることを肝に銘じている。