21世紀はグローバルなレベルで戦略的提携ができない会社は、国内の競争においても、大敗を帰していくだろう。

なぜなら、21世紀は徹底的なコスト削減や、自社にない海外のノウハウ、システムの取得・導入が生き残りのための絶対条件になるからだ。

国内でビジネスするにしても競合他社は、小規模企業でも、グローバルに展開することで、コスト削減を図っている。逆に言うと、今やそれを日本国内や日本企業同士で実現させることは不可能となってきているのだ。

 更に言うと、戦略的国際提携を実現させた会社は、企業規模にかかわらず急成長し、目を見張る業績を残している。もし、日本国内だけの提携であれば、それほどの成果を出せないのが現実だろう。

従って、企業規模にかかわらず、いやむしろ規模が小さい中小企業は積極的に国際企業提携を推し進める必要がある。それは、我々の数々のクライアント企業が実証済みだ。

戦略的国際企業提携とは?

 戦略的国際企業提携は、従来からある企業提携と異なる。

21世紀の激動するビジネス環境において、生き残りをかけ、企業が国際的競合の優位性を確立するための戦略的経営手段と言えよう。私が考える戦略的国際企業提携の特色を次に簡単に紹介する。

(1) 従来の国内の提携とは比較にならないほどのコスト削減が実現できる

(2) 購買や販売において市場が世界となるため、グローバルな事業展開ができ、売上も急増する

(3) 提携を契機に会社のグローバルなスタンダード化がしやすくなり、国際的競争力がつく

(4) 提携企業を通じて海外での経営を学び、優れたところを導入する機会となる

(5) 戦略的国際提携とは、提携によって会社が特に業績面で大きく飛躍できることを指す

 特色はまだまだあるとは思うが、これらを見ていくと戦略的国際提携を行った企業と、そうでないところは、今後大きな差がつくであろう。また、競争が激しくなっていった場合、戦略的国際企業提携をしていない企業は、生き残るのが厳しくなるだろう。

 現実に戦略的国際提携を行ってきた企業、例えばソニー、本田技研工業、ソフトバンク、オリックス、富士ゼロックス、キャノン、楽天などは、創業以来伸び続けているし、業績も戦略的国際提携を行っていない企業に比べかなりよい。

もちろん、戦略的国際提携を行っている企業の中でも業績が芳しくないところもある。しかし、よく調べていただくとわかるが、それらは、表面的または形式的な提携で終わっている。つまり、実質機能していないのである。

 年商5億円以下の私の多くのクライアントも、戦略的国際提携をいち早く実践した。その結果、創業間もない頃から急成長している。上場も時間の問題であろう。

「小規模企業だから、戦略的国際提携ができない」と言われていた時代は、もう終わっているのだ。

全社的なプロジェクトとして推進

 それでは具体的な戦略的国際企業提携の進め方を説明したい。

 手続き的には、以下のような順になる。

(1) 社内にプロジェクト・チーム「戦略的国際提携推進チーム」(仮称)を設置する

(2) 会社の強みと弱み、また既存事業拡大のための、及び新規事業に足りないノウハウ、情報、システム、人材などを明確にするため、「戦略的国際提携推進チーム」でブレイン・ストーミングを実施する

(3) その結果、会社がどうしたら弱みを克服できるか、いかに既存事業を拡大できるか、そして新規事業に足らないノウハウやシステムを構築できるのかの仮説を立てる

(4) その仮説を基に、チーム内で役割分担を決め、具体的な行動計画を立て実行する

(5) 海外視察・企業訪問を実施する

(6) 提携先候補企業に関する情報を収集し、訪問した上で最終候補を選定する

(7) 提携先候補企業と条件などを交渉し、最終契約を結ぶ

(8) 契約後、戦略的国際提携の責任者を決め、責任者の下、支援チームを作り、提携の具体的な実施に入る

 このような進め方はあくまでも一例にすぎないが、大体このような流れになる。

大事なことは、形ばかりの「戦略的国際提携推進チーム」を作るのではなく、強いリーダーシップを発揮できるチームリーダーの下、素直でやる気のあるチームメンバーを各部署から揃え、会社の核となるプロジェクトにすることだ。

そのために社長直属の組織にする必要がある。必要であれば取締役会や経営会議にかけることも考えなければならないが、原則として社長命令による実行部隊にする。すなわち会社全体に執行力を持つものにしなければならない。

提携前に最悪の状況想定が重要

 戦略的国際企業提携の課題は色々ある。特に気をつけなければならないのは、提携先企業の過大評価だ。提携先企業が著名であったり、規模が大きかったり、また業界の古株であったりすると、どうしても期待の方が先行してしまう。

 日本で大手米国企業と合併会社を立ち上げ、さまざまな失敗を繰り返した上で最終的に合併事業を大成功させた日本人社長がいる。彼は業績発表会でしみじみと語った。その社長のコメントは次の通り。

 「国際的な提携をする場合、最初は両者ともお互いの強いところばかりが目に映り、良いことばかりを期待してしまいます。ちょうど恋愛の末に期待を膨らませて結婚するようなものです。しかし、結婚、即ち提携してみると、欠点(短所)ばかりが出てきて、ほとんどお互いの強みが生かされないことが多いのです。そして、『こんなはずではなかった!』と提携したこと自体を後悔し始めます。後悔だけならまだいいのですが、そのうち相手の責任だということで、提携先企業を非難します。相手は海外企業なので、悪化すると日本企業同士と違い、話し合いで解決せず、裁判沙汰になることもよくあります。そのような悲劇を避けるためには、絶対にやるべきことがあります。それは、提携する前にあらゆる悪い(うまくいかない)ケースを想定し、そのケースごとの対応策を両社で考えることだと思います。私はそうやってさまざまな提携をまとめ実行してきました」

 私はこの社長の言われたことにとても同感できる。日本企業は、提携する場合どうしても相手の企業のいいところしか見ないのが現状だ。従って、最悪の状況も考えた上で、その状況でも克服していけるという確信を持つか、もしくは、提携での失敗を「学ぶための授業料」としてとらえるだけの余裕がなければ、戦略的国際企業提携はするべきではないと痛感する。それによって企業経営から判断して致命的ダメージを得ることも少なくないからだ。

 定型話は弁護士、公認会計士、コンサルタントなどのプロに相談しながら検討し、くれぐれも慎重に行うことをお薦めする