今伸びている会社をよく見てみると、例外なく自らがベンチャービジネスに挑戦している。これは100%言えることだ。

 それらの企業は、ベンチャービジネスに挑戦し続けることが、10年後20年後まで生き残るための保証であることをよく理解している。また、ベンチャービジネスに挑戦すること自体が、社内の活性化をもたらすのみならず、既存のビジネスに頼り過ぎない「新しいことに絶えずチャレンジする」革新的な企業文化(コーポレート・カルチャー)を生み出す。

伸びる企業の秘密はまさにそのベンチャービジネスを重視するコーポレート・カルチャーにあるというのが、私のコンサルタントとしての実感だ。

伸びる会社の特徴

 伸びている会社は、絶えずベンチャービジネスに挑戦し続けている。

そこに伸び悩んでいる企業にはない気概があり、失敗をするリスクを抱える一方で、大きな成功も収めている。

伸びている企業におけるベンチャービジネスとは、次の2つのことを指す。

1つは社内からベンチャービジネスを立ち上げ育てること。つまり、社内で予算をとり組織化した上で、「社内起業」(コーポレート・ベンチャー)として新しい事業に挑むことである。

従来の新規事業と違うのは、新規事業部や新規事業室など既存の社内組織の延長上で、社内のヒト・モノ・カネ・情報を使って行うことではなく、まったく新しい事業を起こすための組織を編成することであり、それは社内にこだわることなく、社外の有効なリソースをできるだけ使うことを意味する。

 もう1つは、ベンチャーを立ち上げようする起業家に対して、出資をしたり、足りないものを提供したりするなど、総合的に支援をすること。それにより、社内ではできない革新的かつスピーディーなベンチャービジネスに、社外の起業家と共に挑むことができる。

 いずれも今までの新規事業の立ち上げ方とまったく違う。若手や女性も含めてやる気のある適任者に任せ、権限を与える。上からコントロールすることなく、自由に伸び伸びやらせる傾向にある。

それにより、従来から考えられない斬新さとスピードで事業を育てていくことができる。そうしなければ本当のベンチャーは生まれ育たないことを、伸びている企業の経営陣はよく理解している。

 ここで、伸びている会社の特徴をベンチャービジネスとの関わりの観点から紹介したい。

(1) 経営陣は、企業存続のためにベンチャー式の新規事業、つまりコーポレート・ベンチャーを育成することが必須であることを痛感している

(2) この後に及んでは、既存の新規事業開発部(室)などの組織体で、新規事業を立ち上げても本格的な核となる事業には成り得ないことを熟知している

(3) 経営陣は、社内だけで新規事業を立ち上げることでの成功率や効果の低さをよく理解している

(4) 「社内ベンチャー(推進)委員会」など、社内でベンチャーを育てるための研究・推進・支援組織を編成し、実質機能させている

(5) ベンチャービジネスに関する社外の「アドバイザリー・ボード」や人的ネットワークを組織し、定期的に相談並びに意見交換の場を設けている

(6) 社長自らが社内外のベンチャービジネスを推進し支援するよう、強烈かつ明確なメッセージを社員や社外の関係者(取引先、顧客、株主など)に機会ある毎に送りつづけている

(7) 経営陣が社外のベンチャー企業の経営陣やアドバイザーと、積極的に交流・情報交換している

(8) 社員や社外の関係者(取引先、顧客、株主など)から、新規事業、特にベンチャービジネスに関するアイディア・企画・計画・提案などがどんどん出てくる社内での雰囲気や仕組み作りができている

(9) ベンチャービジネスに関するしっかりとした予算と評価システムを確立し、適切な責任者も配置している

 これら9点について、自社や伸びている会社が実際にどのように取り組んでいるのか、是非チェックしてみて頂きたい。改善すべき点、今後取り組むべき課題が明確になり、非常に意義深いものになるだろう。

なぜベンチャーへの挑戦が会社を伸ばすのか?

 さて、なぜベンチャービジネスを推進し続けると伸びる会社になるのだろうか? それには次のような理由が考えられる。

(1) ベンチャービジネスに継続的に挑戦することにより、社内に絶対に失敗させまいとする団結力と緊張感が保てる

(2) 社内外のヒト・モノ・カネ・情報・ネットワークをバランスよく効率的に使おうとする強固な社内体質が定着する

(3) できる若手や女性社員、更には外国人をベンチャービジネスに関わる新しいポジションに抜擢しやすいため、社内活性化と実力主義の推進・徹底ができる

(4) ベンチャービジネスに人材を導入することにより、将来の経営陣となる候補者が生まれ育つ

(5) 本業では実践しにくい合理的かつスピーディーな経営ができ、そのノウハウを本業に導入・応用できる

(6) 時価総額主義経営の実践ができ、株価の安定成長を目指し業績をよくすることへの社内意欲が高まる

 

 以上述べたように、今後ベンチャービジネスに挑戦する企業とそうでない企業は、大きく差がつくだろう。

今までは、ビジネスや経営において成功してきたとしても、今後ベンチャービジネスに挑戦しない会社は、知らず知らずの内に競争力を失っていく。

つまり、革新的なこと、新しいことに絶えず挑戦しなければ、成長が止まるのみならず、衰退の因をつくる。そうなれば長年続いた大企業でさえも、10年ともたなくなるであろう。まさに、「ベンチャーへの挑戦あるのみ」の精神が、今どの企業にも必要になってきている。