今時代は激動している。情報通信、特にインターネットの出現により急激な技術革新が更に進み、超スピード化、グローバル化が、今までのビジネス環境を完全に変えてしまった。大企業であれ中小・ベンチャー企業であれ、スピード経営、グローバル戦略を採用していかないところは、自然淘汰され始めているのが現状だ。

 つまり、会社は今大きく生まれ変わらなければならない時に差し掛かっているのだ。

その生まれ変わり方も、ただ名前、コーポレート・アイデンティティ(CI)、組織再編、リストラなどの今まで既に行われてきた、形式やハードな部分の変化では、もうどうしようもなくなっている。最もソフトな領域、つまり経営の中枢が変わらなければ、会社の根本的・本質的変化はあり得ない。

 その根本的・本質的変化とは、トップマネジメントにおける強力なリーダーシップのことをいう。そこにリーダーシップを重視する欧米型経営と今でも稟議制やコンセンサスを保持しようとする日本的経営の大きな違いが存在する。

 しかし、スピード化、グローバル化が急速に進んだ現代の激動期において、強いリーダーシップがなければ、短期間で組織をまとめていけない。また、社員の団結のためのベクトルも合わない。今、日本、特にビジネス界では本格的なリーダーが求められているのだ。

リーダーシップのない会社とは?

 あなたの会社では現在次のようなことが起きていないだろうか?

(1) 若手社員や女性社員にやる気が無い

(2) ベテラン社員が何をするにも守りに回っている

(3) 職場にやりがいや生きがいを持っている社員が少ない

(4) 会社全体に上司の威厳がなくなっている

(5) トップからのメッセージが末端の社員に伝わるまで何日もかかる

(6) 社内の各組織に活気や団結力がない

(7) 社員が社長のことをよく知らない

(8) 今社長が何を最重要視・最優先して、会社経営をしているかを社員達が知らない

(9) 会社の経営理念、ミッションステートメント、ビジョンなどを社員が理解していない

(10) 長時間の社内会議や打ち合わせが頻繁にある

(11) 会議をやってもほとんど何も決まらずに終わる

(12) 会社のことで社員が社長に直接意見・提案する機会がない

 これらは、企業のリーダーシップが機能しているかどうかのバロメーターの一部で、挙げれば切りがない。もし、これらの項目で複数以上該当する場合、あなたの会社は、リーダーシップにおいて問題がある。多くの項目が該当する場合は、その会社の衰退は既に始まっており、このまま何もしなければ、確実に破滅に向かうであろう。

21世紀はリーダーシップ経営の時代

21世紀に突入して、我々はビジネス環境においても本格的な激動期に入った。インターネットなどによる技術革新がその引き金にはなってはいる。

実は自分の意志・意向・依頼事項を世界のどこにいようとも、できるだけ早く正確に相手に伝達したいという人間本来の伝達本能が、情報通信技術革新のスピード化後押ししている。ラジオ・テレビ、電話・ファックス、パソコンなどもその望みを達成する手段として、急激に普及した。インターネットはその最新のものといえる。

 インターネットのような、人間の本能を満たす技術が今後も次々と出てくるであろう。そのようなスピード化、グローバル化が急速に進む中、ほとんどの日本企業は、いまだに意思決定の中心的手段として根回しや稟議書、つまり、コンセンサスによるやり方を続けている。

 コンセンサスによる意思決定は、一見すると民主主義的で理想的な印象を得るが、実際にはスピード化、グローバル化するビジネス環境において、非現実的なものとなりつつある。

要するに、関係者の意見調整や合意を待って、意思決定することは、ビジネスにおける激動期に入った今、チャンスを逃したり、遅すぎたりして、意味をなさなくなっているのだ。

また、コンセンサスによる意思決定では責任の所在が明確にならず、上手くいかなくなった場合、責任をもって迅速に軌道修正や撤退を行うことが非常に困難となる。

 現代の企業経営において最も必要なことの一つは、強力なリーダーシップだ。

スピーディーかつグローバルにビジネス環境が急変する中、どの意見・決定も確実とはいえなくなってきている。こういう状況下において、リーダーは不十分な情報を基に迅速に意思決定を下さなければならないのだ。しかも致命的な失敗は許されない。

 今、伸びている企業を見て頂きたい。海外では、マイクロソフト、インテル、オラクル、スターバックスコーヒー、モトローラ、ゼネラルエレクトリック(GE)、ウォールマート、ホームディポ、アップルコンピュータ、デルコンピュータ、シスコシステムズ、ヤフー,グーグルなど。

また、国内でも、オリックス、セブンイレブン、ソフトバンク、ワタミ、ファーストリテイリング、グッドウィル、イオン、日産自動車、キャノン、トヨタ自動車など。いずれもトップが実質的に強力なリーダーシップを発揮しているところばかりだ。

本物のリーダーシップとは?

 逆に強力なリーダーシップなしで伸びている企業があるのだろうか?

私の知る限りにおいて、トップの強力なリーダーシップなしに長期的に業績を伸ばせた企業は皆無だ。

 強力なリーダーシップは、ビジョン、目標、計画を明確にするだけでなく、社員に対してあらゆるチャンスを通して、会社の業績、内容、問題点、協力要請事項などしっかりとコミュニケーションを図ろうとすること。であるから、企業内にトップへの信頼感、社員間での強い団結力、努力することへのモチベーション、会社への忠誠心を生む。

結局、企業が伸びるかどうかを決めるのは、社員をどれだけやる気にさせるかにかかわってくる。それは、トップによる社員へのコンスタントなコミュニケーション、つまり強いリーダーシップが決め手になる。

 気を付けなければならないのは、リーダーシップと独裁やワンマンとはまったく違うことだ。

リーダーシップでは、まわりの意見やアドバイスも聞いた上で、上手くいかなかった時はすべての責任を自らがとる覚悟で、最高責任者として意思決定を下す。

独裁やワンマンでは、まず人の意見やアドバイスは受けない。また、最終の責任を明確にしないまま、トップの好みや独断で意思決定をしてしまう。なので、間違える可能性も大きいし、間違えた時に打つ手もまた好みや独断で行うため、一度間違えると泥沼にはまるようなもので致命的な失敗となる場合が多い。どんどん致命的になっていってします。 

一時期、故・藤田田氏が日本マクドナルドで、故・中内功氏がダイエーで、そのパターンにはまっていたのを思い出す。

 最後にアメリカの本物のリーダーは以下のことを実践している人が多い。「強力なリーダーシップ」とはどういうものか、を参考にして頂ければ幸いだ。

(1) トップは定期的にまた積極的に、会社の経営理念、ミッションステートメント、ビジョンを社員に対して訴えている

(2) 意見箱やメールなどを通して、社員が直接トップに意見・提案できるようにしている

(3) トップは積極的にコミュニティー活動やマスコミなどを通じて自己紹介、自分の意見、考え方、経営計画などを公表している

(4) 社内の問題点を担当者任せにせず、解決案を共に考える。

(5) 可能な限り権限を各担当者に委譲し、結果が悪ければ理由を明確にした上で、その責任はトップ自らがとる

(6) 初期意思決定はできるだけ早くした上で、その後の結果をしっかりフォローし、修正・追加・撤退などの二次的決断も迅速にする

(7) 社員から誤解を招く言動は一切しない

(8) 社員を絶えず激励し安心感・信頼感を与え、また信頼関係構築・維持を最優先する

(9) 本当に会社のためになる場合、強い反対があっても、また回りから憎まれても自らの責任で勇断する

 丁度、日産自動車の再建をやったカルロス・ゴーン氏がこのようなリーダー像に当てはまる。これらをまとめて一言で言うと、「勇気」だ。つまり、組織の中で、自らの保身の考えるような人は、リーダーになってはならないのだ。