「五年後、十年以後、成功するためには今何をすべきか?」

「今やっていることで、本当に将来勝ち組として競争に生き残れるのだろうか?」

「これから何をしたら伸びていけるのだか?」 


これは、不確実、不安定、そして急変する現代において、先が読めない中、激烈な競争を繰り返している資本家・経済人・経営者・企業にとって一番知りたいことの一つだろう。現に、講演終了後、また様々な経営者や各界のトップ方々とお会いする度に、私は必ずこのような質問を受けるのだ。

私はその質問に答えたくこの本を書いた。20年近く米国にいて見ていると、日米の経済・ビジネス活動やその仕組みの歴然とした差は約十年以上あることがわかる。これは私だけでなく、日米で同時に生活や仕事をしている人なら誰にでも実感できることだろう。つまり、経済・ビジネスにおいて米国で起きたことが十年以後に日本でも起きているのだ。

従って、「今日本で起きていることは、十年以上前に米国で起きたこと」となる。これが正しいかどうかは、実際に日米で起こってきたことを調べればすぐにわかることだ。

また、逆にこれから、何をすべきかを判断するのに、今米国で何が起きているかを徹底的に把握すれば、十年後に日本の状況も見えてくる。


一昔前の日本の高度経済成長期には、グループ企業間での株の持ち合い、経営と株主の一致、株主不在の株主総会、年功序列、終身雇用、企業内組合など、日本企業独特の非資本主義経済的ルールがあり、そのルールに乗っ取っていれば、ある程度の規模・歴史がある企業では、誰がトップをやっても、それなりの成果は出せた。しかし、今後は違う。

リップルウッドの新生銀行(前日本長期信用銀行)買収、村上ファンドの東京スタイル株式大量取得、ライブドアのニッポン放送買収、楽天のTBS株式大量買付けによる経営統合申込み等々。成功・失敗は別として、10年前にはまったく想像していなかった出来事が立て続けに起きている。

これらは、始まったばかりで、今後まだまだ増えるだろう。むしろ、急増することが予想される。

それは資本主義経済では当たり前のことで、今まで起きてなかったこと自体不思議だったのだ。


米国のビジネス・スクール(経営大学院)で国際経済や財務論を教えていた時、日米経済・ビジネス・システムの違いを説明する度、日本の資本主義経済であることの矛盾点を受講者である大学院生から、質問攻めになりよく困った。苦し紛れの説明をすると、更に鋭い指摘が返ってくる。

「それでは、日本は本当の意味での資本主義経済ではありませんね! もしかしたら、社会主義経済国以上の社会主義経済かも知れませんね!」と。

20年間近く資本主義経済先進国、米国にいて日本を見てきて思う。彼らが指摘するように、まだまだ日本は本当の意味での資本主義経済にはなっていない!

しかし、インターネットやブロードバンドの普及に伴い、社歴、伝統、規模ではなく、スピード、革新性、将来性が評価されるベンチャーが、大企業を脅かす時代に突入しつつある。

そんな今の経済・ビジネス環境において、日本も本格的な資本主義経済の論理で動かなければならなくなってきた。

本著は、6年前に私が日本商工会議所の広報誌「石垣」で連載した記事を、新しく書き直したものだ。当時は「ベンチャーが大企業を食うなんてあり得ない!」と言うのが、「大企業危機論」で警告を発していた私に対する大企業経営者の方々の反応だった。

「論より証拠。時が来たら、現実を見てわかるだろう……」

 私はあえて反論せずに、時が来るのを待った。

そして、その「論より証拠」が今ようやく立証され、わかってもらえる時が来たのだ。逆に様々な大企業の経営者から相談が持ち込まれ始めた。 

従って、再度私は警告したい。これから「ベンチャー戦国時代」に突入し、時代のニーズに応え、スピーディーに新しいことに挑戦しないところは、大企業たりとも一瞬にして滅びると。

日本長期信用銀行、山一證券、三洋証券、ヤオハン、マイカル、ダイエー、カネボウ等々。例を挙げれば切りがない。

ここで再度申し上げたい。

「あなたの会社は大丈夫?」

もし、この質問に自信を持って返事ができなければ本著をじっくり読んでもらいたい。

本著は、その答えとして、解決策を提案するためのものだからだ。ぜひ十年後、二十年後の勝ち組として、いっしょに生き残っていこうではないか!


大和書房より「あなたの会社はベンチャーラッシュ時代に生き残れるか?」(仮題)が出版されます。以下その本の「プロローグ」です。