就職先を選ぶ基準は、あなたの将来の夢や目標によりけりでしょう。できれば将来のキャリアアップに繋がる就職先を選ぶべきです。ただ、私は経験上、どの仕事からも一生懸命徹底してやれば何か学べるもの、将来に繋げることがあると思います。

でも、その前に、そもそもあなたは将来何をしたいのですか? 何になりたいのですか? 私が今まで就職先について相談を受けたほとんどの人がこの質問に答えられませんでした。将来何がしたいか、何になりたいか、わからない若者が圧倒的に多いのです。

であるならば、好きな仕事ができそうなところを就職先として選べばいいのです。好きな仕事がわからなければ、嫌いな仕事、或いは好きでない仕事をしなければならない就職先を避ければいいのです。

しかし、覚えておいて下さい。大きな会社や組織に入れば、就職して研修が終わるまで、どの部署に配属になるか、どんな仕事をするのか、まったくわからないことが多いのです。確実に言えることは、新しく就職した場合、まず雑用をすることになるのです。ランク的に一番下ですから、当然のことです。ただし気を抜いてやっていると大変なことになります。その雑用をする姿を見て、まわりの人々はあなたの評価をします。

雑用とは一見誰でもできる簡単で重要ではない仕事のように見られがちですが、実は、仕事を完結させる上で、また会社や組織全体の観点から見ると、きわめて大事な作業なのです。

例えば、顧客との商談に使う提案書のコピーです。提案書作りそのものは、きわめて重要です。作るのに、かなり経験と知識が要求されます。ですから、提案書が出来てしまえば、一番時間がかかることが終わったことになるので、やれやれと一段落ついてしまいます。

ところが、仕事はまだ完結していません。プレゼン資料として、商談当日のために必要な部数をきれいに必要部数コピーしておく必要があります。そのコピーという仕事の部分は、正直言って雑用です。でも雑用だからといって、軽視したり手を抜いたりしたら、当日顧客候補がいい思いをしないでしょう。彼らは、あなたの会社や組織全体の仕事ぶりを見て、仕事を依頼するかどうかを判断します。単なる提案書の中身だけではありません。

この場合の資料のコピーはきわめて重要になります。顧客候補を満足させるだけの完璧な資料作りをしなければならないのです。間違えてコピーしたり、また部数が足りないということは、例え雑用だからといっても許されません。

ほとんどの仕事のミスや失敗は、実はこの雑用を軽視してしまうことからくるのです。メインの仕事は、それなりに緊張し力を入れてやりますが、雑用だと思うと、ついつい気を抜きがちなのです。米国にいた際学びましたが、飛行機や電車などの事故も、危険度の高い作業より、誰でもできる単純な雑用をきちっとしなかったために起こることが多いのです。

就職先は、あなたがしたい仕事ができる可能性の高いところに決まれば理想的です。しかし、実際最初から自分の希望通りの仕事ができる可能性はきわめて低いと判断したほうがいいでしょう。

大事なことは、どこに就職しても、勤め人である前に、常識ある社会人になることです。ですから、社会人としての基本ができていない人はどこに就職しても通用しません。そんな人は、周りの人達が、評価しませんから、好きなことなどやらせてもらえるわけがありません。返って嫌なことばかりやらされることでしょう。

私は、学生の頃、今の職業である「国際経営コンサルタント」になることを夢見ていました。具体的にその夢を最短で実現するためには、外資系の大手コンサルティング会社に就職して、修行すればいいことが、様々な専門家に相談してわかりました。できれば、日本ではなく、コンサルティングの本場、米国で働いた方がいいと、先輩「国際経営コンサルタント」から、アドバイス頂きました。

ですから、大学を卒業する際、日本での就職活動には、目もくれずさっさと渡米してしまいました。その時、既に私の戦う場は、米国と決めていたのです。

結局世界に10万人以上の会計士やコンサルタントなどのプロフェッショナルを有する国際会計・経営コンサルティング会社の本社を就職先として選びました。選んだ理由は、大学卒業後10年経ったら「国際経営コンサルタント」として独立することを目指していましたので、その10年間で、私が専門とする分野、つまり会計・財務で最も実力がつくであろう会社で修行するべきだと判断したからです。

実際に就職したところ、毎日が資料の準備、コピーとり、電話番、掃除、片付け等々雑用ばかりでした。私と同時期に入社したハーバードやスタンフォード大学経営大学院(ビジネス・スクール)出身のエリート達は、不満タラタラでした。

「俺はこんな誰でもできる雑用をするために、米国トップ・ビジネス・スクール出て、世界的なコンサルティング会社の本社に就職したんじゃないぞ! いつまでこんなバカでもできることをやらされるんだ!」

 ということで、入社してすぐに行われた一ヶ月間の新入社員研修を終えた直後辞めたエリート達が何人かいました。

 就職先選びで大事なことは、本社が立派だとか、会社や組織の規模が大きいことではありません。経営陣、特に社長の人間性や上司になり得る人達の人格がポイントになります。人は人にから学び、人から評価を受けるので、まわりのリーダーや上司になる人達がどういう人はきわめて大事です。

 私も、新卒で就職した国際会計・経営コンサルティング会社、KPMG、またその後ヘッドハントされたプライス・ウォーターハウスでは、直感でしたが、面接頂いた将来の上司の人間性や能力の凄さを察知して、入社を決めました。

 勿論就職先候補のことは、しっかり調べ、基本的なことは理解しておくべきですが、最後は将来の目標と夢に照らし合わせ、経営陣や上司になる人々に共感できるかどうかで、就職を決めたらどうでしょう。それで判断を間違えても、納得がいくと思います。