大ありです! 就職活動を単に就職先を見つけるためだけにやっていたら、就職先が見つからなければ悲劇です。無駄なことに時間、お金、労力を費やしたことになります。

 就職活動をすることは、就職先を見つける以外に少なくとも3つの大事な意義があります。

 一つ目は、自分の進路、つまりキャリア人生を考える絶好のチャンスです。就職活動は、就職候補先やその業界を調べたりするのみならず、本当にその会社、業界、職種を選ぶことが、将来の自分にプラスになるかどうかを深く考えるいい機会なのです。そもそも、まず就職すべきなのかも就職活動しながら考えさせられます。

 私は、大学在学時代、日本では一切就職活動をしませんでした。普通に企業に就職しても、長続きしないことは明らかだったからです。そもそも「国際経営コンサルタント」になりたかったので、その分野での先進国、米国に修行に行きたいという夢がありましたので、日本での就職は眼中になかったのです。

 大体頭も記憶力も悪く、何事もやることが遅い私が、日本の企業ですぐに通用できるとは思えませんでした。万が一就職できたとしても、万年平社員か、すぐにクビになることは、私には明らかだったのです。

 幼稚園から大学まで、劣等生と負け組生を通してきた私が、普通に就職してエリート達と競争しても、勝てるわけがありません。そこで、進路における差別化を考えたのです。まったく人気がなかった「経営コンサルタント」業の道に進むことで、将来の生き残りを賭けたのです。

当時(20年以上前)、日本のコンサルティング業界はまったく人材不足で、いい日本企業に就職できなかった人や頭は悪くないが変わり者が選ぶ職種であり、業界だったのです。

それでも、知る人ぞ知るで、田辺昇一、船井幸雄、飛岡健、大前研一、堀紘一という「超」スターコンサルタントの諸氏が世間の経営者の間で名前をとどろかせ始めた頃でもあります。

私はと言えば、そのまま日本にいて就職したら、負け組人生から、一生抜け出せなくなる絶望感がありました。高校3年時に、出会った人の影響で「国際経営コンサルタント」を生涯の職業にしようと決めていましたので、その先進国である米国で修行したく、迷うことなく渡米しました。

最初は米国の経営大学院(ビジネス・スクール)を7校も受けたのですが、すべて落ちてしまいましたので、急遽米国で就職活動するはめになりました。

実はその時、将来の独立を考え、どうしても入りたかった会社がありました。世界中に10万人以上のプロフェッショナル・スタッフを有する大手国際会計・経営コンサルティング会社に就職することを、その存在知って以来ずっと夢見ていました。そのために、日本の大学でも、経営学を専攻し、ゼミでもあまり好きでなかったのですが、「米国管理会計学」を選びました。すべてが、米国でその大手国際会計・経営コンサルティング会社に就職したかったためです。

ある時、新聞にその会社の募集広告を発見しました。そこには、「日本語を話せるプロフェッショナル募集」とあり、応募条件は次の通りでした。

(1) 米国の大学、又は米国の大学院を優秀な成績で卒業

(2) 日本語と英語が堪能

(3) 3年以上の実務経験

(4) 日本又は米国の公認会計士(CPA)か、候補

残念ながら、私はその時、その必要な4つの条件のどれも満たしていませんでした。とい

うことは、応募しても採用される可能性は、限りなく0%に近いのです。ですから、応募しても無駄なのです。

しかし、私の当時の米国での就職活動の目的は、もし、その時がダメでも、将来大手一流コンサルティング会社の就職に再度挑戦することにありましたので、勉強と将来のための経験を兼ねて、応募することになりました。

 驚いたことに、そのコンサルティング会社の役員から、面接を受けに来るように連絡があったのです。それで、「どうせ、今回は採用されないことは100%明らかなので、練習と度胸試しのために、どうどうと面接を受けようと決意して、その面接に臨みました。そしたところ、あまりにも、私が開き直り堂々としていたためか、その場で即採用になってしまいました。これには、私もビックリしました。

「人生は終わってみなければわからない!」

 これは、私が尊敬する先輩で、現在米国で大学の学長をしている方がいつも私に語ってくれた言葉です。私に奇跡が起こる度に、彼のこの言葉を思い出します。

 私はこの面接を通して、本当に自分が「国際経営コンサルタント」になりたいことがよくわかり、あらためて進路を確認した次第です。

右記の4つの条件の何一つ満たしていないにもかかわらず、堂々と面接を受けている自分を見たとき、正直言って驚きました。「好きこそものの上手なれ」で、面接の対応も同じ自分とは思えないほど、見事に対応していました。憧れの会社の本社で、その役員に面接してもらえていること自体が嬉しくてしょうがなかったのです。

その時、心から彼らがカッコよく、輝いて見えました。「いつか私も彼らみたいになるぞ!」と、深く決意していました。

 私はこの就職活動で新たな自分を発見し、厳しい米国の業界でもやっていけるのではないかと大きな勇気をもらいました。そもそもほとんど可能性がないにもかかわらず、ただ憧れで、身分もわきまえずそのポジションに応募したのです。しかし、その無鉄砲な行動がなければ、何も起こらなかったのです。おそらく、「国際経営コンサルタント」としての今の私はなかったことでしょう。

 この一連の就職活動では、私にとって、自分の進路、つまりキャリア人生を再度考える絶好のチャンスとなりました。

 さて、就職先を見つける以外に就職活動をするもう一つの意義は、徹底的な「自分棚卸」ができることです。ちなみに「自分棚卸」とは、私がよく勝手に使う言葉で、自分の強み弱みを客観的徹底的に見つめなおすことです。特に、自分だけでは、主観的になって見えない部分もありますので、自分をよく知ってくれているわまりの人達にも、長所・短所を率直に指摘してもらいます。

その「自分棚卸」をすることで、自分という人間を客観的に知り直すのです。それで、就職活動をすると、何のために就職するのか、どうしてそこで働きたいのかを、自分という人間に照らし合わせて考えさせられます。

 おそらく、幼稚園に入り、高校や大学を出るまで、「社会と自分」ということを深く考えさせられることは、この最初の就職活動以外ないのでは。ただ、残念なのは、いきなりそんな大きな人生の課題を与えられても、ほとんどの人は、結局時間切れで結論が出ないまま、入れる企業や組織に就職していきます。それでも、真剣に初めて考えるチャンスが持てること自体が大事です。

 就職活動の三つ目の意義は、社会に向かって初めて自己アピール、要するに自分を売り込むようになることです。

社会に出れば、そこから競争が始まります。コツコツやっていれば、誰かが見ていて評価してくれるだろうという甘い期待をしてもダメです。そんなに世の中皆に優しくありません。

運がよければ、そんなこともあるかも知れませんが、大概は、自分からアピールしないと誰もわかってくれません。まして社会に出れば熾烈な競争が始まるわけですから、どんどん売り込まなければ、他に優秀で成果を出している人達から、時間と共に突き放されていきます。

 就職活動でもまったく同じことが言えます。直接的・間接的にかかわらず、どんどん自分という人間を知ってもらい、評価してもらわなければなりません。そうでなければ、採用してもらえる可能性が限りなくゼロになります。

 ですから、いかに効果的に印象良く自己アピールができるかがポイントになります。一種のコミュニケーション能力でもある、自己プレゼンテーション能力をつけなければならない時でもあり、またその能力が一挙につく時でもあります。

 いかに就職活動が大切かわかってもらえましたか!