単に上場を目指すだけなら、上場するだけで精一杯になります。頑張って上場できたとしても、その後必ず行き詰まります。上場時やその後の株価が適切なものになるか否かは、上場後の具体的なシナリオ次第なのです。従って、上場後の具体的なシナリオをしっかり決め、余裕を持って上場する必要があります。

 上場後も成長し続けられるシナリオ作りをしっかりせず、上場後に窮地に追い込まれたのが、株式会社タスコシステムです。同社は平成13年9月にジャスダックに上場しました。

しかし、上場前からそばを中心に創作日本食を提供していた主要業態「高田屋」以外、継続的な成長のための戦力業態やシナリオを開発できないままで無理して上場しました。ですから上場後から、一挙に業績が悪くなり、株価も下がり続けました。その後、投資会社に買収され、その傘下で生き残りのための道を模索しています。

 上場とは、ボクシングでいうところのリングに上がり、正式な試合をすることです。従って、リングに上がる前に一生懸命練習するのはあたりまえのことで、むしろリングに上がった後、どうやって試合に勝つかの具体的なシナリオをいくつか用意し、シュミレーションをしておかなければなりません。そうでなければ、対戦相手も同じように練習してきているのですから、既に負ける因を積んでいるのです。

 逆に上場後のしっかりしたシナリオとなる(1)最速ADSLサービスの提供、(2)ISP事業の開始、(3)モバイル・ブロードバンド通信事業の開始などを上場前から具体的に準備し、上場後もそれを着実に実行することで急成長を続けているのが、イー・アクセス株式会社です。同社は上場前も後も、投資家から高い評価を得続けているのです。

 上場後のしっかりしたシナリオを準備している会社は、既存株主や投資を検討している人々に安心感と期待感を与えます。そして、会社の大事な価値評価の指標である時価総額をも押し上げる効果があります。それが上場会社の本当の実力なのです。