上場するのに一番のカギは、経営戦略でも財務戦略でもありません。売上を増やし利益率を高めること、即ち業績をよくすることのみです。業績がよくなっていけば、時間の問題で上場できます。逆に、業績がよくならなければ、どんなに力のある主幹事証券会社やどんなに素晴らしい上場コンサルタント等がついていたとしてもダメです。力ずくで上場したとしても、それは業績による実力でできたわけではないですから、必ず後で上場取り消し等の厳しい反動がやって来ます。

 上場準備に入ったら、経営管理体制や内部管理体制の確立、戦略的な事業計画の立案、予算管理、IR(投資家に対する広報)活動、組織編成等々、短期間でやらなければならないことは山ほどあります。しかし、それらはあくまでも体裁を整えているだけで、根本的にやらなければならないのは、業績をよくすることのみです。売上を増やし利益率を高められれば、あとはすべてがついてきます。

 創業当時からお手伝いした会社に株式会社メディアシークがあります。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)の技術コンサルタント数名とエンターテインメント事業経営者により、東京都港区麻布台に同社が2000年3月に産声を上げました。主にIモード等のデジタル情報メディアを活用したEビジネスに関するコンサルティングを行う「メディアコンサルティング&ソリューション事業」、及びIモードを使ったコンテンツ及び広告配信サービスを提供する「メディアイノベーション事業」を開始したのです。同年8月末で第1回決算をし、同年12月22日に東証マザーズに、会社設立より9ヶ月という超スピードで上場を成し遂げました。

 上場に必要な最低2期の決算が行われていなかったことや上場基準期の売上規模が2億5000万円とあまりにも少ないことから、不可能と言われていた上場でした。しかし、小さいながらも、第1回の決算終了後もどんどん業績を伸ばし、無事世界最短の上場を成し遂げたのです。

 メディアシークは記録的な超スピード上場を成し遂げたわけですが、その主な理由として、西尾直紀社長の徹底した業績主義にあると、当時近くで見ていて確信した次第です。