いよいよ上場するタイミングを決めなければならなくなった時、主幹事証券会社、監査法人、ベンチャー・キャピタル(VC)、投資銀行、銀行、コンサルタント、税理士等々の専門家達が、いつ上場すべきかについて様々なことを言ってきます。関係者全員のアドバイスと経営者の考えが一致していればベストですが、そういうことはまずないのです。

 私が上場支援をしてきたクライアントの場合、上場のタイミングについて、必ず専門家達と経営者間では意見が分かれました。専門家達は何かあれば責任問題になるので、当然のことながらより安全な上場のタイミングをアドバイスします。しかし、経営者の場合、安全であることも大事ですが、競合他社との熾烈な競争の中、スピード、勢い、積極性、市場獲得、成長性、認知度等様々な角度から経営戦略の一貫で考える必要があります。

 証券会社、VC、投資銀行は、上場した時の株価ができるだけ高くつけば、株を売ることでのキャピタル・ゲイン(見返り利益)やコミッションの報酬も高くなります。ですから、できれば株価が一番高くなるタイミングで上場させたいのは本音でしょう。しかし、会社から見ると、上場するということは、認知度を上げ、更なる資金調達をしていくために、あくまでもスタート・ラインに立っただけです。

従って、上場後も株価が自然に上がるだけの業績向上の当てがなければ、無理に高い株価で上場してはいけません。むしろ、低めの株価で上場し、経営の実態である業績をよくし、それに伴って株価が上がっていく方が、健全かつ安全な上場となります。

イオングループの社内ベンチャーとしてアミューズメント事業部を立ち上げた辻義則氏(当時部長)は、岡田卓也イオン会長(当時)を説得し、株式会社イオンファンタジーを1997年2月に設立。2002年に店頭登録、2003年11月に東証2部、2004年12月に東証1部に上場させました。上場時は1500円くらいだった株価が、その後毎年業績を伸ばし、徐々に増え現在4000円近くとなっています。その上場のタイミングから株価設定までの決断をしてきたのが、専門家方ではなく、辻会長だったのです。