上場の準備で、社内において要になる人がCFO(最高財務責任者)です。CFOの資質で一般的に最も大事だと考えられているのは、専門能力なのですが、それは大きな間違えです。勿論専門的な経験・知識・能力も大事ですが、もっと重要なのことは積極性、戦略性、責任感を持っていることです。正確には、経営者感覚、つまり経営者と同じ責任感と目線で考え動けるかということです。

CFOは、経営者と同じ思いで戦略的かつ積極的に動かなければ成果は出ません。つまり、「CFOは将来のCEO(最高経営責任者)候補」のなのです。驚くことに、専門家の中でもCFOと経理部長や財務部長との違いがわからない人は圧倒的に多いのです。

自著「CFO 最高財務責任者」や「CFO入門 成功に導く40の解答」(共に日経BP企画刊)でも紹介しましたが、CFOには、次の4つの大きな役割(業務)があります。①経営戦略執行業務、②価値評価業務、③リスク管理業務、④投資家とのコミュニケーション(IR)業務です。

ある時、新聞協会から、全国の新聞社の経理や財務担当者のための講演の依頼を受け、「CFOの役割」というテーマで話をさせて頂きました。その際、200人以上いる参加者にCFOと経理部長や財務部長との違いを質問したところ、誰も答えられませんでした。参加者のほとんどは、経理や財務の仕事を20年以上もしてきたプロなのにです。

 CFOと経理部長や財務部長との大きな違いは、CFOが将来のための財務戦略を練り、前向きかつ能動的に財務管理を行いますが、経理部長や財務部長は、過去の取引の記帳など後ろ向きで受け身の管理業務をします

 模範的なCFOに、イー・アクセスというベンチャー企業のエリック・ガン副社長がいます。彼は、米系投資銀行、ゴールドマン・サックスでアナリストでしたが、ゼロからイー・アクセスを立ち上げるため共同創業者になりました。同社のため短期間で1000億円以上の資金調達をした凄いCFOです。彼の経営者感覚は並外れたものがあります。