会社の資金調達には様々な手段がありますが、その一つに株式を新しく発行することによる資金調達方法が挙げられます。これを実践する為には、「株主資本(資本金など)をどう増やしていくのか?」「株主を誰にするのか?」「どのタイミングで株式を発行するのか?」また、「どのような株価にしていくのか?」など色々な戦略が必要になります。この総合的な財務戦略こそが「資本政策」なのです。

 資金調達において、「資本政策」は大事な役目を果たします。業績が悪くても、「資本政策」が魅力的であれば、通常得られない出資を受けられることもあります。投資家からすると、事業と「資本政策」が魅力的なため、高いリスクでも出資したくなるからです。つまり、それだけ賭けてもいいほどの大きな利益が将来期待されるのです。

 「資本政策」を作成・実施する上で、一番大事なことは、誰に対しても公正であること、そしてできるだけシンプルにすることです。

ある上場を目指すベンチャー企業が、増資した際、前回の増資時よりも半分以下の安い価格で、親しい友人のみに新株を発行しました。業績が悪くなったのなら、いざ知らず、前回の増資時からその増資時の間までに、大型受注も決まり、単月で黒字化するなど株価を上げるべき要因はありましたが、下げなければならない理由はまったくなかったのです。

 後にこれが大問題となりました。急成長したことより、上場のため、各証券会社に「主幹事引受け」の要請を打診しました。しかし、資本政策を見て全社とも断わってきたのです。「そんな非常識な『資本政策』を実施した会社は信用できない!」との理由からです。

 また、業績が悪いのにもかかわらず、「資本政策」において、様々なテクニックを連発する会社も信用されません。例えば、株式分割、株式併合、ストックオプション、株価急増などをよく行う会社がありますが、業績さえよくしていけば、このようなテクニックを頻繁に使う必要はありません。ただ、単に業績に応じて株価を上げさえすればいいのです。ですから、優れた「資本政策」とは、業績と連動した公正かつシンプルなものなのです。