「社長! 毎月の売上結果や営業マンからのフィードバックから、もう理解頂いていると思いますが、このままではどんなに頑張っても大して売れません。そもそも今のビジネス・モデルでは儲からないでしょう!」

 「ちょっと待って下さい! 我々のシステムは最新で業界一です。(理論的な)シミュレーションでは、2兆円ある市場でかなり売れ、利益率も10%以上になることが証明されています。長年試行錯誤を繰り返しやっとの思いで創った完璧なシステムを基にしてのビジネス・モデルです。時間をかければ必ず売れるはずです! 顧問の先生が弱きでは困ります! どんどん売り先を紹介して下さい!」

 「しかし、社長! 現にアンケートでも『技術的には高いが、使い勝手が悪く高過ぎるため、買う気になれない』という厳しいコメントを多くの潜在顧客から頂いています。さらに財務業況が悪化し手遅れになる前に、ビジネス・モデルを儲かるものに再構築するようお薦めします」

 起業コンサルティングをしていると、このように、社長が自信を持って構築したビジネス・モデルが、そもそも儲からないものであることがよくあります。確かに一見、理論的には市場もニーズもありそうなのですが、実際に一定期間営業(テスト)してみると、予想もしない様々な障壁が明らかになり、客観的に見れば売れないことがよくわかります。それでも、苦労して創り出したため、思い入れがあり、起業家はがんとしてビジネス・モデルを変えようとしません。

事業は理論通りいくことは、まずありません。ですから、起業しながら、非現実的な点や矛盾点などどんどん修正・変更し、ビジネス・モデルを変えるか、進化させていかなければなりません。それができなければ、そもそも事業として成り立たないのです。

言葉で言うのは簡単ですが、残念ながら現実に起業後、苦労して創り出したビジネス・モデルに必死に賭けていることから、起業家の皆さんは変えたがらないのです。