初めて起業する方から、会社の場所(事務所)をどこにすべきかの相談をよく受けます。私の最初の起業時は、交渉の結果2年間無料で事務所を借りました。信用や見栄えを気にし、いきなり都心の一等地にある一流ビルに無理して事務所を構える起業家がいます。資金的に余裕があっても、まだ儲かっていない内は、そんなお金を使うべきではありません。

 もう、一昔前のバブル経済成長期ではありません。今は大儲けしている一流企業ですら、直接売上に繋がる、または顧客満足度を高めること以外にはお金を使いません。徹底して経費削減しています。見栄や体裁のためにお金を使うことは、ベンチャー企業にとって返って「危ない会社」としてマイナスのイメージとなります。

 先日も、日本で最も売上と利益を出している、絶好調のトヨタ自動車が役員や管理職の経費削減を更に進めていることを紹介する記事が新聞に掲載されていました。その記事を読んで、今はもう形式や体裁ではなく、激化する国際競争の中で将来生き残るために、数字による徹底した費用対効果で判断する時代に入ったことを実感しました。

 起業したての頃は、通常、経費をカバーするだけの売上はまだありません。であるなら、企業経営の基本として、必要最低限に会社維持することのための経費以外は一切使うべきではありません。私もそうでしたが、まず自宅からスタートさせるか、不都合であれば、近くの安い住居用マンションを借りればいいのです。イメージや信用の観点からもまったく問題ありません。まだ収益もないのに無理して立派なところを借りても、中身なしで格好だけつけていることがすぐばれます。将来儲かってからいいところに移ればいいのです。

 米国での私の元顧問先に世界最大級の情報システム・サービス会社、EDSがあります、同社を創業し大富豪になり大統領候補にもなったロス・ペロー氏は、IBMを辞めた際、彼が社長で奥さんが取締役となり、テキサス州ダラス市郊外にある自宅のリビング・ルームを事務所にして事業展開されました。当時、自宅を拠点とした同社が、短期間で世界最大級のサービス会社になるとは誰も予想しなかったことでしょう。