「ネイト! 起業したけど、なかなか上手くいかないんだ。手伝ってくれないか?」

 友人の起業家、ティム・パワーを訪問した際、いきなり頼まれました。ちなみに、「ネイト」と言うのは、米国テキサス大学経営大学院(ビジネス・スクール)博士課程在学時代、指導教授、デール・オスボーン博士が名付けた私のニックネームです。当時、オスボーン教授と「起業がなかなか軌道に乗らない時、何年やったら諦めるべきか?」というテーマの論文を共同で書いていました。

そのネタやデータ探しのため、私は友人達が経営するベンチャー企業に毎日のように訪問していた時のことです。その研究を通じて得た結論は次の通りです。

「起業して3年経っても売上等で成果が出ない場合、その事業は止めるか、抜本的な変更をすべきである」。なぜなら、3000社近くベンチャー企業を我々が調査した結果、バイオなど長期研究が必要な特殊な事業を除き、3年経って軌道に乗らなかった事業は、それ以降どんなに期間を費やしても結果的には成功していないのです。ですので、起業後、そのまま続けるかどうかの判断に要する期間は、最長でも3年で十分なのです。

話を最初に戻します。私に支援を求めてきた友人起業家、ティムに聞きました。

「起業して何年たった? 今までの売上高は?」

「5年。売上高はまだ29万ドル(約3千万円)程度だよ。なかなか売れなくてね……」

「え! 起業して5年なのに売上がそれだけ? じゃあ今までに使った資金は?」

「全部で約500万ドル(約5億円)。年間100万ドル(約1億円)近くかかるんだ」

「ティム! 悪いこと言わないけど、もうその事業は止めた方がいいよ! 金食い虫なだけで、まず上手くいかないから。それより、短期で売上が見込める事業に変更しよう!」

これはよくあるケースです。自らのビジネス・モデルや技術にほれ込み、いつか花咲くことを夢見てだらだら続けているのです。起業する際、3年経っても成果がでなければ、事業の抜本的な変更や違う事業を行う「けじめの心」を持ちましょう!