起業で失敗する理由で多いのは、自分の力を過信することです。会社勤めをしていて、どんどん成果を出した場合、できない人達と組んでやるよりは、自分一人でやった方が効率もいいし、さらに成果も出るような気になります。私もそうでした。10万人以上プロフェッショナル・スタッフ(公認会計士・税理士・弁護士・コンサルタントなど)がいる大手国際会計・経営コンサルティング会社に勤めていた際、会社のためにどんどん仕事をとってきました。最も大事な評価基準「顧客獲得数」で当時私はダントツでした。私は一人でも仕事ができ、自分には実力があると勘違いしました。そこから悲劇が始まりました。

「それだけ成果を出したのだから、独立してもなんとかなるだろう」と思い起業したのですが、なんともならなかったのです。最初は営業すらせず、独立したことを通知すれば顧客候補から連絡があり仕事がもらえるものと高を潜っていました。ところが、連絡はあっても仕事はまったくもらえませんでした。それで慌てて真剣に営業を始めたのですが、相変わらずダメでした。それまでの成果は信用ある大手一流企業の看板があったからこそで、私のことも信用し、顧客になってくれていたのです。

私の場合、起業する前に、やるべきことを怠っていたのです。それは、自分「棚卸」です。それも、シビアな自己チェックです。例えば、営業が得意というのは、信用力のある組織がバックについていたからであって、自分一人の信用力で成果を出したのとは違います。自分「棚卸」では、自分の得意なことや苦手なことを徹底的にチェックします。苦手なことを発見することは簡単です。嫌いだったり、頑張っても成果が出ないことですからすぐわかります。問題は、私の営業例のように、本人は得意と思っていても、実際に違う環境や条件で、最初から最後まで一人で行う場合、得意ではないことがよくあります。強みだと確信していたことが実は強みでもなんでもないのです。

自分「棚卸」で大事なことは、自己否定をすることです。得意と思っていることでも疑ってみることです。厳しい環境下で行う場合、全然得意でないことは往々にしてあります。