「起業することを考えていますが、デメリットを考えるとなかなか踏み出せません。どうしたらよろしいでしょうか?」

 東京大学法学部を卒業し、大企業で部長をされている、私より十以上年上の方から突然質問を受けました。前々から仕事ができ頭のいい人というのが、私のその方に対する印象でした。彼が起業すべきかどうかを聞かれても、本人ではない私にはなんとも答えようがありません。ですので、起業において最も大事なポイントを聞きました。

 「経験・知識・人脈において、十分なような気がしますが、起業されたいのですか?

 「はい、起業したいです」

 「では、起業されたらどうでしょう」

 「でも、(起業の)シミュレーションをしてみたら、色々な問題点が浮き彫りになり、その割にはメリットがあまりないようなのですが・・・・・・」

 実は私も米国で起業する際、同じように徹底的にシュミレーションしたため返って悩みました。考えれば考えるほど、問題点ばかりが出てくるからです。しかし、思ったのです。「じゃあ成功した人達は、起業時は問題がなかったのか?」と。それで、ずうずうしくも、当時私が米国で顧問をしていた、大成功した起業家達に直接聞いてみました。

世界最大の小売業「ウォールマート」のサム・ウォルトン会長、米国最大級のゴルフ場運営会社「クラブ・コーポ・インターナショナル」のロバート・デッドマン会長、世界最大のパソコン・メーカー「デル・コンピュータ」のマイケル・デル会長、大手化粧品会社「メアリー・ケイ」のメアリー・ケイ名誉会長、大手不動産会社「トラメル・クロウ」のトラメル・クロウ名誉会長、大手投資会社「レインウォーター・インク」のリチャード・レインウォーター社長。彼らは皆口を揃えて同じようなことを言いました。「創業当時は毎日が戦争状態で死ぬ思いをしました。問題がない起業などあり得ません!」と。

最終的に起業できるかどうかは、「勇気」です。成功する保証など誰にもないですから。