友人の紹介で会食してから、ソフトブレーン株式会社代表取締役会長の宋文洲さんと親しくさせて頂いております。彼は中国山東省で生まれ、中国の東北大学を卒業しました。難関の政府留学試験に合格し、北海道大学大学院で博士号を取得。不幸にも帰国を天安門事件で断念し、札幌の小さな会社に就職しましたが、二ヵ月後にその会社が倒産してしまいました。 

しょうがなく、学生時代に開発した土木解析ソフトの販売を始め、ヒットしたため、二十八歳の時にソフトブレーン社を創業。外国人(中国人)というハンディー・キャップを乗り越え、ニ000年十二月に東証マザーズ、二00五年六月には東証一部上場を果たし、同社を業界最大手にしました。

 それだけでは彼は終わりません。創業者である宋会長が自分の持ち株を村上世彰氏関連のファンドに譲渡し、村上代表をソフトブレーンの社外取締役に迎え入れたことで、世の中を驚かしました。それもそのはず、上場企業は皆、いかに「村上ファンド」から自社の株を買われないようにするかで、日々戦々恐々として、その防衛策を研究していたからです。

 宋会長はまさに絵に描いたような立身出世の人です。苦労されたためか、とても気さくで、しかし、相手のためになると思えば、遠慮なく問題点を指摘します。

 先日も、弊社主催のセミナーに講師としてお話をして頂きました。その時の次の言葉が忘れられません。

 「ほとんどの日本人は必死に働くことは良いことだと思っています。とんでもないことです。必死とは『必ず死ぬ』と解されます。ですから、必死に働くとは、必ず死ぬくらい働くということで、成果とは関係ないことです。仕事で大事なことは、プロセスと成果です。必死かどうかは関係ありません……」 

 「なるほど! 言われると通りだ! 必死に仕事しても成果が出なければ、評価はされないなあ・・・・・・」

 私はそれまでの仕事の仕方を反省しました。必死にやっていれば、雰囲気でまわりの人はそれなりに、評価してもらえるだろうという日本的な甘えを持っていました。プロフェッショナルとしては、むしろ要領よく短時間で大きな成果を出す方が大事なのです。