「出世する人は本当にあいさつが上手な人が多いですね! 感心します」
あいさつの達人である上場企業の社長さんから、突然言われました。確かに私が知りうる限り、出世してきた人は、あいさつがなぜか上手です。特に声、話す速さ、お辞儀のタイミングなど見事な人が多いのです。そして、彼らがあいさつする時の笑顔は素敵で魅力的です。そもそも元気な人達なのですが、あいさつする時は更に元気を出します。
渡米して最初に働いた大手国際会計・経営コンサルティング会社、KPMGに、私の上司の上司で、デイビッド・クーゼンバーガーというアメリカ人取締役がいました。彼は、本社役員の中でも数人しかなれない経営戦略会議メンバーの一人で、全社的な国際部門のトップでもありました。社内でも大変な影響力を持っており、彼が承認すればほとんど何でもできる、つまり、CEO(最高経営責任者)に近い権限を持っていました。
クーゼンバーガー氏は、KPMGでは珍しく三流大学出身者でした。ですので、本来なら彼のようなバックグランドの人は、あまり上まで行けないのですが、彼は「超」スピード出世をし、四十二歳で取締役になってしまいまた。それは、KPMGでは異例中の異例で、社内外でも、彼は実力派の若手として注目の的になりました。
たまたまクーゼンバーガー氏の部屋と私の部屋が隣り合わせでしたので、毎朝私の部屋の前で彼にバッタリ会うのです。その際、彼の方からニコッと笑みを浮かべながら、元気よく私にあいさつをしてきます。そのあいさつは、心のこもった素晴らしいものでした。
私のような新人からしてみると、雲の上の存在である上司の彼から、朝あいさつされた日は、一日中うきうきし嬉しくてたまりません。ある朝、いつものようにあいさつをした後、クーゼンバーガー氏に聞いてみました。
「どうして、そんなに素晴らしいあいさつができるようになったのですか?」
「あいさつで人をポジティブに変えたいと思い、誠心誠意あいさつできるまで何度も何度も毎日練習しました。そして、あいさつがちゃんとできるようになったら、まわりの評価も上がり、スピード出世し始めました。あいさつのお陰で私はここまでこれたのだと確信し、感謝しています」