「自分以外皆先生」

 これは、松下電器産業創業者で、「経営の神様」と言われた故・松下幸之助氏がよく言われたそうです。リーダーになる人は、皆肝に銘じるべき言葉でしょう。

 私の経験から判断して、伸びる人は自然にこのことを実践しています。学ぶこと、人間的に成長することにハングリーだからです。

同じ人間であるのに、ある人は他人、特に上司や同僚に関する評論や批判ばかりしています。妬みや嫉妬で生きている人です。ある人は、少しでも学ぼうと、まわりの人の良いところを一生懸命把握し真似しようとしています。

この心がけの差は、最初は小さいのですが、時間と共に境涯という観点から大きな違いになります。出世続けられる人はそういう人です。

謙虚に一生懸命学んでいる人に対して、まわりの人は敬意を抱き、応援をしたくなるものです。また、高く評価し、いっしょについて行きたくなるものです。

ただ単に頭がいい人と「自分以外皆先生」と本音で思い、言動している人は、出世の観点からも大きな差がつきます。騙されたと思って実践してみて下さい。効果抜群です。

私が米国で独立する前に働いていた大手国際会計・コンサルティング会社、プライス・ウォーターハウス(PW)に、「自分以外皆先生」を本音で思い、実践していたポール・ウィーバーというアメリカ人上司がいました。彼は、私を含め部下に会う度に、まず最近問題となっていることや、現場で困っていることを聞いてくるのです。

他の上司は我々に会うなり、一方的に話し続け、お説教や自慢話をします。ウィーバー氏はとにかく、我々若手に教えを請うのです。

そもそも彼は上司であるため、「親しき仲にも礼儀あり」で、できるだけ慎重に彼から学ぶ姿勢を私は一貫して通しました。本音で出世頭、ウィーバー氏から学びたかったのです。

ウィーバー氏は四十歳という若さで、数少ないPW本社の戦略会議メンバーに選ばれました。まわりの人々は、彼が将来PWのCEO(最高経営責任者)になると信じて止みません。万が一、彼がそのトップの座につけなければ、実力があるのでどこでも通用するでしょう。