自著「あたりまえだけどなかなかできない仕事のルール」(明日香出版社刊)のルール21で「ギブ・アンド・ギブ・アンド」の大切さを説きました。ポイントは、「親の愛情のように見返りを一切期待せず、徹底的に人の相談に乗り手助けしてあげること」ですが、これがなかなか簡単にはできません。

 頭で理解できても、これを実践するとなると、ともすると物質主義や自己中心主義になりがちな自分と厳しい戦いをしなければなりません。しかし、一度これを真剣に徹底的に実践した人は、どれほど「ギブ・アンド・ギブ・アンド・ギブ」、つまり見返りを考えずにお手伝いをし続けることが、自身を幸せにしてくれるかよくわかるはずです。

 見返りを考えずにお手伝いすると、まわりにあなたのファンが増え、気が付いたら、多くの人があなたを尊敬し、慕い、応援したくなります。あなたのために何かしたくて、まわりの人はあなたのことをほっておきません。それを実践していれば、部署で誰かを昇進させなければならない場合、上司を含め、まわりの人は、真っ先にあなたを推薦することでしょう。これを人は、「人望が厚い」とか「面倒見が良い」とか「人徳がある」とか言います。

出世のために、人のお手伝いをしようとすると、不思議なもので、その言動からすぐその魂胆がバレテしまいます。どこか恩着せがましくなり、返っていやらしく、手伝われたほうは、気持ちが悪くて素直に喜び感謝できません。

米国にいた際、五千人のメンバーを有する非営利組織(NPO)のリーダーをしていました。社会で悩み苦しんでいる様々な人々を支援する組織です。ある時、エイズで死にかかっている男性のところに行って激励することになりました。メンバーは移ったら怖いとか、激励の仕方が分らないとかで、誰も行きたがりません。その時、ある一人の男性が立ち上がり、ぜひ行かして欲しいと言うのです。

その人は、それから五年後に世界最大級の石油会社のCEO(最高経営責任者)に大抜擢されました。実は彼は当時違う会社に勤めていたのですが、彼のその勇気ある言動が伝説となり、様々な会社から講演を依頼されるようになりました。そのうち、講演先の一社であるその石油会社にヘットハントされたのです。ただただお手伝いしたかった彼もビックリです。