エリート意識を100%捨てられる



 米国で大手国際会計・経営コンサルティング会社で働いていた時、日本では信じられないくらいのスピードで出世していたアメリカ人達がいました。私も外国人としては、スピード出世させて頂きましたが、彼らの出世の速さといったら、足元にもおよびませんでした。

 「凄いなあ! 多分天才的な能力を持っているんだろうね!」

 あるアメリカ人「超」出世組の一人が、昨年昇進したばかりなのに、更に一ランク上になったことを紹介していた社内報の記事を同僚と読んでいて、同僚が溜息と共に一言。ぜひ彼の優れているところを学びたくて、私はずうずうしく彼の部署に行き、彼とのディナーのアポをいきなり取り付けました。

 「あなたは、会社始まって以来の勢いで出世しているということで、社内外で大変な評判と注目を集めていますが、自身から見てどうしてだと思いますか?」

 私は相手がアメリカ人で英語での会話ということもあり、ディナーの初っ端から遠慮なく単刀直入に聞きました。

 「私が一流大学・大学院(エール大学、ハーバード・ビジネス・スクール)卒業だからだと思っている人が多いのだけど、私は大学も大学院も入れないはずだったのに、ギリギリで入れたんだよ。ラッキーだとしか言いようがないよ。そして、大学院も卒業できるかどうかわからないぐらい落ちこぼれていたのに、なんとか卒業でき、こんな一流コンサルティング会社に入れたのも、ラッキーだと感謝している。僕なんて大したことないよ。聞くところによると君は日本の大学を出ただけの外国人にもかかわらず、どんどん昇進しているらしいじゃないか。英語や異文化の中でそこまで評価されるのは、我々アメリカ人にはできないことだよ。何か秘訣があったら教えてくれないか?」

 私は愕然として言葉を失いました。世界に十万人以上いるプロフェッショナル・ファームの本社勤務、つまりエリートコースで、記録的早さで出世している人の言葉かと耳を疑いました。これをきっかけに、彼とは大親友になりました。その後、ヘットハントを何回かされ、彼は今、米国大手投資銀行のCEO(最高経営責任者)をしています。

 エリート意識を一00%捨て切れる人はどこでも出世できるということを痛感しました。