これからは、頭がいいだけでは出世できません。なぜなら、頭がいい人はエリートですから、小さい頃から頭がいいことで、まわりの人達にちやほやされてきました。なので、出世の決め手となる「気配り」の大事さも学べず、身に付けずにきてしった人がほとんどだからです。

と言うことは、頭がいいだけの人はかわいそうな人です。せっかく勉強で頑張ってきたのに、会社や組織に入っても、出世できないからです。一番理想的なリーダーは、頭が良くて、気配りができる人格者です。両方を持ち合わせた人はそうはいません。

私は小さい頃から「頭悪いね!」とか「バカなの?」とよく言われてきました。「頭いいね」と言われたことは、生まれてよりこのかた一度もありません。

謙遜抜きに、自分ぐらい頭が悪い人にはめったに会ったことはありません。基本的には「自分以外皆私よりに頭いい」ということを嫌というほど思い知らされてきました。

ところが、英語が「超」苦手だったのに、十万人以上のプロフェッショナルを有する世界最大級の国際会計・経営コンサルティング会社「KPMG」のニューヨーク本社に、日本の大学出たてで運良く就職できました。それは、まさに高校三年生の時以来の夢でした。

当時、英語もできず、専門能力もなかった私が、なぜKPMGの本社に入れたか、まったく奇跡としか言いようがありません。もし、少しでも評価頂けていたとしたら、その面接で最大の気配りをしました。昔から気配り(私は「気配り力」と言います)は得意でしたので。

「どうせ今回採用してもらえないことは間違いないのだから、将来、力をつけて再応募するために、明るく元気に謙虚でどうどうとさわやかに応対するぞ! この面接から学ぶぞ!」と決めて望みました。一種の開き直りですが、極めて前向きな気持ちでした。

就職の面接から始まって、国際会計・経営コンサルティング会社に計十年近く勤め、スピード出世させて頂きました。入社して一年でコーディネーター(係長)、二半年でマネージャー(課長)、五年でシニア・マネージャー(部長)、七年でディレクター(執行役員兼本部長)という具合です。まわりの人達があまりの出世の早さに唖然としていました。専門能力では最低レベルでしたので、出世させて頂いた理由は、「気配り力」だったことを痛感します。

「気配り力」、つまり、職場でどれだけ気配りができるかが出世ではカギになります。