以前出版した自著「MBAでは学べない勝つ経営の本質」(日経BP企画刊)で、企業として生き延びていくため、組織をプロフェッショナル化させることの重要性を説きました。

従来のピラミッド型組織ではトップどころか、中間リーダー達も、現場の正確な声や情報を得られず、不正確なかつ古い情報をもとに意思決定しなければなりません。そんなことをしたら、当然判断も間違ってしまいます。

 以前のように、右肩上がりの高度経済成長期であれば、多少間違いを続けていても、それなりの成果は出ていたのでなんとかやってこれました。しかし、今は不景気でどの分野においても「小が大を食う」時代であり、安定成長などあり得なくなりました。

ライブドアのニッポン放送買収劇、また村上ファンドや外資などによる様々な上場企業をターゲットにした大量株式買付けなどで象徴されるように、大組織でも一瞬たりとも息が抜けなくなりました。組織運営も本物のプロがしなければ成り立たなくなっています。

 米国では、エンロンやワールドコム、日本でも、長期信用銀行、山一證券、三洋証券、マイカル、ダイエー、カネボウなど例を挙げればきりがありません。

 このように戦国時代のような「弱肉強食」「下克上」の環境下では、組織で最も求められてくる大事なことの一つは、組織をプロフェッショナル集団化させることです。言い換えれば、組織のメンバー一人ひとりに、今携わっている仕事のプロになってもらうことです。

 これは大変なチャレンジです。と言うのは、今皆さんのまわりにいる組織のメンバーは、その仕事のプロになるためではなく、将来の安定を得るために組織に入ってきた人が多いからです。

 しかし、生き残りをかけ、組織間で熾烈な競争が始まり、競争力のある強い組織以外は自然淘汰されます。

現代における競争力のある強い組織とは、一人ひとりの組織のメンバーが、経験・知識・役職ではなく、プロとして費用対効果・時間対効果を踏まえ、組織に対して成果や貢献度で評価できるシステムを持てたところです。ただ、その前提は「人間主義」であり、メンバー一人ひとりとの対話ができるオープンな組織活動です。