オーストリア=ハプスブルク帝国の銀貨で19世紀〜20世紀半ばまで、中近東から東アフリカ地域を中心とした広い地域の基準通貨として流通したマリアテレジアテーラーですが、基準通貨として同等の規格で製造発行した国があり、ここにまとめてみたいと思います。
マリアテレジアは神聖ローマ皇帝の地位を持続していたハプスブルク家カール6世の長女として生まれ、男系が途絶えた後の相続人として周辺国の干渉による継承問題をしのぎ、実質的な女帝(皇帝は夫や息子が即位)として統治した人物です。
1780年に死去するまで女王(大公)として支配地域のコインの肖像として使用され、1751年オーストリア、南ドイツの基準通貨コンベンションテーラーの規格(Ag.833 重量28.0668g含有量23.386g)でマリアテレジアテーラー銀貨は製造され流通しました。
当時オスマン帝国の銀貨は劣悪で、この銀貨の人気が高く、地中海沿岸レバント地方、オリエント方面やフランス方面との貿易決済にも使用され実質的貿易通貨として流通し始めていた為、最終年号1780年銘で製造は続けられました。
1858年にオーストリアの正式通貨から外れますが、アラビア、アフリカ方面での信用と流通量は大きく製造は継続、貿易と植民地化で進出したイギリス、イタリア等で多く製造され、1961年の他国での製造中止まで、貿易用貨幣として大量に作られました。
16人の子供を出産したふくよかな肖像と、ローマ帝国由来の双頭の鷲の精巧で良質なデザイン
は特別な物として、偶像崇拝しないイスラム教徒にも受け入れられたようです。
モカコーヒーの交易にはこの銀貨が利用され、富として退蔵された事で一層このコインの流通を高めたようです。
MTT基準にした通貨制度を作った国としては、エジプト、ヘジャーズ(サウジアラビア)、オマーン、エチオピア等があり、イエメンでは1970年代まで実際に使用されていたとの事です。
現在でも1780S.F.銘そのままの形で非流通貨としてですが、ウィーンで製造されています。
☆㏎#T 1Restrike 1780 S・F・ Ag.833 28.0688g
☆ボヘミア(オーストリア領)㏎#816 1780PS-IK(1812-20Pragueミント) Ag.833 28.0688g
チェコ、プラハ製。製造時本国でも通用したタイプ
☆イタリア領エリトリア㏎#5 1Tallero 1918年 Ag.835 28.0688g
イタリア政府がデザインまで似せて使わせようとしたコインとして知られる
アフリカ進出で1889年エチオピア領から植民地となり、通貨発行をはじめるものの流通は失敗に終わり、以降はオーストリアよりMTTの製造認可を取得、ローマで製造し流入させた。
1タレロ=5リラで、エジプト20ピアストル=5フランに準じて導入させています。
☆アビシニア(エチオピア)帝国㏎#5 1Birr1889=1897年 Ag.835 28.075g
1855年正式に通貨としてMTTが採用され、1895年より等価格の独自通貨ビルを発行開始しましたが、発行数は少なく地方中心にMTTの流通は止められなかったようです。
また第二次大戦時のイタリア侵攻時にはイギリスもMTTを大量に製造し利用しています。
イタリア統治中もMTTは退蔵され続け、1941年の英領東アフリカシリングへの交換レートは1s10½d(1-7/8s)でした。
☆エジプト(オスマン帝国属領)㏎# 20Qirsh 1293(29)=1904年 Ag.835 28.0g
1834年、独自に20キルシュ(ピアストル)=1MMTとする貨幣制度を創設(金銀複本位制)。
1844年 等価であったオスマントルコ通貨のリラ単位創設時の切り下げに応じず完全分離。
1885年1英ポンド=0.975埃ポンド(97.5キルシュ)の金本位制導入時、1MTT=21キルシュ
5仏フラン=20キルシュと再評価されたといわれる。英語版wiki
☆イエメン(ムタワキリ王国)Y#7 1 Riyal 1344=1926年 Ag.83 28.07g
1918年オスマン帝国の撤退後独立し、MTTと等価の通貨リアルで通貨を製造、流通させました。
実際に流通したのはMTTで、使用感のあるコインは見かけないコインです。
南イエメンのクアイティQu'aitiではMTTにカウンタースタンプ打ちしたコインがあります。
☆マスカット オマーン#31 1Saidi Rial 378=1959年 Ag.833 28.07g
18世紀〜19世紀にインド洋交易で覇権を握り、東アフリカ沿岸に進出した国で主にMMTとインドルピーが主要な通貨でした。(1ルピー=64バイサ、230バイサ=1MMT(リアル)のレート)
通常貨分類でAg.500製含め140万枚も製造していますが、使用されたコインは見かけません。
品位の判別はほぼ不可能です。
他にザンジバル王国=オマーンの植民国家がMTTを基準にリアルを通貨単位とし、同規格の1リアル銀貨がありますが未入手です。
またMTTのカウンタースタンプ打ちはイエメン,モザンビークに正規例がありますが、ヒジャーズ王国等の多くは確証されておらず、1970年代以降に収集家用に作られた偽物のようです。
※参考文献
The Maria Theresa Thaler 1780
アラビアのマリア・テレジア銀貨 山崎祐輔著
Maria Theresa thaler(Wikipedia)
numista カタログ

























































































































