「だめだ」と窓ぎわの男は言うなり本を小机の上に放り出して立ち上がった、「勝手に出ていってはいけない。あんたは逮捕されたんだ。」

※小机/Tischchen→Tausch/交換

☆小机というのは交換、あの世とこの世の転換点だと思う。(つまりアルキメデスの梃子の点と同意味)

 逮捕/gefangen→gefahrde/危険

《「勝手に出ていってはいけない。あんた危険(な状態)なんだ。」》

 

「もう訴訟手続きはとられている、」

Das Verfahren ist nun einmal eingeleitet,

※einmal/いまこころみに

 eingeleitet→Eingebildetheit/想像、空想

☆「もう訴訟手続きはとられている」のセリフの中には(いまこころみに想像して)というメッセージが。

 

われわれみたいな監視人に決まったのと同じ幸運、

※監視人/Wachter→Vater/父

☆監視人は天のお父さまとユダ(Kの祖先)、Kの系譜。つまり男であれば父なるもの

 

二人はKの寝巻をとくと調べて、あなたは今後もっと劣悪なシャツを着なければならんことになる。

※寝巻/Hemd→Heimat/故郷

☆寝巻は故郷のことである、着衣としての『精神』の表明でもある。

 

持ち物は保管庫よりわれわれにあずけておいたほうが安全なんだよ」、と二人は言った、「保管庫じゃよく猫ばばされるし、それにあそこじゃ一定の期間が過ぎると、問題の訴訟が終わろうと終るまいとおかまいなしにいっさい合切売りとばされてしまうからね。それにこういった訴訟ときたらいったいどれくらいかかるものやら、とくに近頃は!売られてもいずれ最後にはむろん保管庫から売上金を貰えはする、しかしこの売上金というやつは第一それ自体ごく僅かなものでしてね、しかもその売上金の額を決めるのは、付け値の多寡じゃなくて、賄賂しだいというわけだからね、そのうえまた、経験によれば、そんな売上金も手から手へ、年度から年度へ渡る内には、自然と目減りしていくものなんだ。」

※持ち物/寝巻→精神(故郷)

 保管庫/Depot→Devot/信心する、信仰する

 猫ばば/Unterschleife/欺瞞

 問題の訴訟/任意の人の任意の死

 売りとばされて/Verkauft man→Verlauf  kerl/浮浪人 (manもkerlも男、奴

 訴訟/Processe→Promesse/約束、予約

 近頃/letzer(前者に対して後者)旧約に対して新約

 売上金/Erlos→Erlosen/救済、救い出す

 付け値/Angebotes→angeboren/天性の、生まれつき

 賄賂Bestechung→Bestimmung/運命、宿命

 手/Hand→権力

 年度/Jahr→Jahr hundert/時代

 減らす/verringern→verlegen/忘れ去られる

《精神は信仰(教団)よりわれわれにあずけておいたほうが安全なんだよ」と二人は言った、「信仰(教団)じゃよく欺瞞(嘘)がある死、それにあそこじゃ一定の期間が過ぎると、人が死のうが死ぬまいがおかまいなしに浮浪人にされてしまうからね。それにこういった約束ときたらいったいどれくらいかかるものやら、とくに近頃(新約)は!

 浮浪人になってもいずれ最後にHむろん信仰によって救済はしてもらえる。しかしこの救済というやつは第一それ自体ごくわずかなものでね、しかもその救済を決めるのは、生まれつきじゃなくて運命しだいというわけだからね、そのうえまた救済も権力から権力へ、時代から時代へ渡る内には、自然と忘れ去られてしまうものなんだ。」》

 

この辺りは非常に深い意味が込められている一つは下着をあずかるという行為。

①「彼らは互いにわたしの上着を分け合い、わたしの衣をくじ引きにした」という聖書が成就するためで兵卒たちはそのようにしたのである。(ヨハネによる福音書・第19章より)

②あなたを訴えて、下着をとろうとする者には、上着をも与えなさい。(マタイによる福音書・第5章より)

③目に見える一口の料理とともに精神の糧が、目に見える一枚の衣服とともに精神の装いが、大切に受け止められているのである。そしてこれこそ、一人一人の人間を証明するものだ(カフカ『八つ折り判ノート』より)

 

〈人が死のうと死ぬまいがおかまいなしに浮浪人にされてしまう〉

 ユダヤ人の国を持たない放浪性を言ったのだと思う。

 サルトルは彼(ユダ)がキリストの殺害者であるというのはユダヤ人の流浪性を利用した伝説であると述べている(『ユダヤ人』JPサルトル)