この瞬間をビュルストナーは利用して、身をもぎ放し、ドアを開け、控室にすべりこんで、そこから小声でKに言った。
※そこから/dort→dort/あの世、来世
控室の空間は宇宙、小声などと書いてあるので、直ぐ近くのような錯覚を抱いてしまう。
「すぐいく」、とKは言って、走り寄り、彼女を捕らえ、彼女の口にキスした。
※天空でキスといえば「食」
ビュルストナー(おとめ座)、月、地球、K(太陽)と並んだのだと思う。
(「こんどこそ行く」と言って、「すぐいく」と言ったけど、行かなかった。
喉の渇いた獣がとうとう見つけた泉に舌をつけるように、顔じゅういたるところにキスをした。最後に彼は彼女の喉のあたりにキスをしてそこにながいこと唇を押しあてていた。
※喉/Hals
喉/Krof→Klopfe/戸をたたく→Knopf/呼び鈴の押しボタン(死への合図)
この場合の(喉)の意味は、キスが「食」を表すとともに「死」をも暗示する行為ではないか。(月食は死にいたる門扉)
《もう一つの考え》
※喉/Rachen→rachen/復讐をする、しかえしをする
(ビュルストナーの喉にキスをする)ということは聖母マリア(という考え/伝説、物語)に仕返しをする、そういう言い伝えの源であるキリスト教にに迫害されたユダヤ人として復讐するという意味かもしれない。
この描写は《月食》であり、Kはとうとう見つけたのである、本当の死への入口(門)を。
泉は「根源」、生命の発生源。カフカは宇宙の現象の神秘に存在の神秘を重ねたのだと思う。
大尉(太陽)・グルーバッハ夫人(地球)・ここの明り(月)がならんだのである。
「こんどこそ行く」と言ってビュルストナーの名を洗礼名で呼びたかったが、それを知らなかった。
※月のことを(サンタマリア)というのではないか(アベマリア)とか、マリアが洗礼名
自分でもなにをしているのかわかっていないように、キスのために彼に手をまかせて、それからかがみこんで部屋に入った。
※自分でも、というのでなくこちらからは見えなくなる、キス(月食)のために。
大尉の部屋で物音がしたときやっと彼は目をあけた。
※大尉(太陽)の部屋でものおとがした時→夜が明けた
Kはそのすぐあとにはベッドに横たわっていた。
※横たわる/lag(liegen)…死を暗示する言葉ではある
眠りこむ前になおちょっとのあいだ自分のふるまいについて反省した、彼はそれに満足した。
※満足/zufrieden→zufalling/偶然の
《眠りこむ前になおちょっとのあいだ自分のふるまいについて考えて見た、彼はそれを偶然のことだと思った》
しかしじぶんがもっともっとまmmぞくしていないことをふしぎに思った。
※この現象は「死」への入口だから、満足とは多少異なる。
大尉を考えると彼はビュルストナーのことが心配でならなかった。
※大尉は自分と同じ太陽、しかし大尉の性格については不明(第4章で明らかになる)
(第1章フロライン・ビュルストナーのこと・了)