ぼくが監督官で、あそこのトランクに二人の監視人が座っている(略)そうだ、ぼくのことを忘れていた、一番重要な人物、つまりぼくは、この小机の前に立ってるんです。
《ぼくが監督官で、いかにも説明としての監督官の一のようであるが、監督官は第9章で判明するのだけれど、三位一体、父母子、だからこそ、ぼくが監督官でもあるのだと思う。》
「彼はまさにどなるんだが、残念ながらここのところをわからせようとすると、ぼくもどならなくちゃいけなくなる、ところでそうやって彼がどなるのは、つまりぼくの名前なんだ」
※あの世(死後)での再会である声をかぎりに叫ぶ(どなる)子供(K)の名前・・・深い感動のシーンである。
「腕はこの肱掛けからだらっとたらして、無頼漢そっくりにね。」
Arm hier uber die Lehne hinunterhangend ein ein Lummel sondergleichen.
hinuterhangend/だらっとたらして→hin/死んで、unter/下、hangrnd/ぶらさがる
lummel/無頼漢→lumen/光
sondergleichen/そっくり→sonder/特殊,gleichen/のような
《向こう(あの世)であること、本当は見えない(光)、そして特殊(ユダ)にかぎることなどを暗示しているような監督官の姿に思える》
彼はゆっくり叫んだ。
「ヨーゼフ・Kだね!」
ところで、これは彼が脅かしたほど大声にではなかったが、それでも叫び声は、とつぜんそれが口をついて発せられたあとになって、初めて徐々に部屋の中に拡がってゆくようであった。
そのとき隣室のドアを二度三度、強く短く、規則正しくノックする音がした。
※強く/stark→spuk/幻影
短く/kurz→kalt/冷たい
規則正しく/regelmaig→rigel messias/小さい輪、救世主
《そのとき隣室のドアをノック(死の鐘)した。》
Kはなおしばらくのあいだ、今朝の出来事と、彼が演じてみせている娘のことのほか、なにひとつ考えることができなかったために、それだけ特にひどくぎょっとなった。
※今朝の出来事/三位一体、父母子、ユダのこと
彼がえんじてみせている娘のこと→母
母のことしか考えていなかったのに、ということはノックは「父」ではないか。
われにかえったとたん、彼はビュルストナーのところにとんでいって、彼女の手をとった。
※手をとった/nahm ihre Hand→nehmen/手にいれる、奪う
(伝説ではあなたの産んだ子であると言われているキリストのようだけれど、あなたはわたしの母だ!)
「怖がることはありません」
このセリフは意味を強調しているのではなく、むしろ隠蔽している。