今朝窓ぎわの小机にのっていた朝食器類もすでに片付けられていた。
自分だったらたぶん器をその場で叩き割っても、決して運び出すことはできなかったろう。
※窓ぎわの小机/Tisch→Tausch/交換→あの世とこの世の交換点
食器/Geschirr→Geschehins/出来事
(今朝の出来事の痕跡は払われている。自分だったらたぶんその場で破壊し決して(こちらからあの世)に運べなかったにちがいない、自分自身の生命である。
おれがあのことを話したので驚いているらしいな、と彼は思った。おれが自分からあのことを話すのを正しいことだとはおもっていないらしい。しかしそれだけになおのことおれにはそうすることが大切なのだ。年をとった女性としかあんなことは話せないんだ。
※「あのこと」→あのこと、あんなの、あんなこと、あれは…。
①「そうですとも、二度と起こっていいことじゃありませんよ。」
②「あれをあんまり深刻にとりすぎてはいけませんよ。」
③あのことの原因→「今朝は厄ここに来た男たちのことですよ。」(フランツとヴィレム、旅行服の男、イスカリオテのユダ
①②③から「あのこと」というのは《イエスを銀貨三十枚で売り渡したとされている「あの件」であることが解る。
Kは黙ったまま彼女がまた靴下の繕いをはじめるのを眺めていた。
※母なるグルーバッハ夫人はあの古い罰を繕っていた、否、繕い続けているのだ、いつまでも、今でも、ひっそりと寝静まった深夜、人知れずに。にもかかわらず「あんなの別に手のかかることでもなんでもありませんでしたよ」「あれをあんまり深刻にとりすぎてはいけませんよ」と、子なるKに語るのである。
「わたしが少しばかりドアのうしろで盗み義期しました。(略)そんなわけでいくらか耳にしましたが…」
※盗みぎき、耳にする/gehorcht、gehort→gehorchen/自然の法則にしたがう
グルーバッハ夫人(地球の母なるもの)は自然の法則にしたがうというニュアンスがある。
「しかしこの逮捕は なんていうか、なにか学問めいたことのような気がするんですよ、」
※学問/Gelehrtes
学問/Wissenschaht/自然科学的
《「しかしこの逮捕(死)は なんていうか、なにか自然科学的な気がするんですよ。」
「グルーバッハさん、少なくともぼくは部分的にはあなたと同意見ですよ、ただ全体についてぼくはあなたよりもっときつい判断をしています。ぼくは学問めいたこととさえ考えない、ただもう無意味だと思うだけです。ぼくは奇襲された、ただそれだけのことです。」
《死が自然科学的現象だというのは同意見ですが、全体、つまり、あのユダの件については学問めいたことさえ考えない(冗談じゃない!)ただもう無意味だとおもうだけです。ぼくは死んだ(奇襲)ただそれだけのことです。」