(お向かいの老人たち)

①向かいの家に住む老婆がなみなみならぬ好奇心をみせてこっちを観察している。

②いままた真向かいになった窓ぎわに歩よって、さらに事の次第を見とどけようとしていたのだ。

③向こう側に例の老婆が、かのじょよりもっとひどい年寄りを窓ぎわにひっぱってきて、抱えて見させているのが見えた。

④いまごろたぶんまたぞろ向かいの窓にむけ行進中の、あのお向こうの二人の老人でもよかった。

⑤向かいの窓には例の二人の老人がいたが、今度はお仲間がふえていた。というのは、かれらのうしろにかれらよりきわだって大きな男が、胸をはだけたシャツ姿で立って、赤味がかったとんがりひげを押したりひねったりしているのだ。

⑥三人のほうもすぐ二、三歩ひきさがって、そのうえ二人の老人はさらに男のうしろに姿を隠した。男はその二人を幅のひろいからだでかばいながら、彼の口の動きからさっするところ、遠いためにきこえないながら何事かをいっているらしかった。

⑦老人たちはたぶんまだ階段のあたりにいるのだろう。

 

お向かいの家(老人たち)と下宿の位置関係はどうなっているのだろう。

②で、いままた真向かいになったという説明があるが、Kが自分の部屋からちなりの部屋へ移動した時点の話である、Kが移動した部屋でも、老婆の家は真向かいにあると考えるのが順当である。

 しかし、もしかしたら、老婆たち(の家は)動いているのかもしれない。動くはずがないものという家という物体の概念がある。

老婆が歩よったり、行進中であったり、二、三歩引き下がったりするのが、お向かいとはいえ、と太田女声も届かぬ距離なのに逐一認識できるはずもない。仮定法で書いてある、しかし老人たちはたぶん階段のあたりにいるだろうなどというのも妙である。

 

結論から言うとKは確かに部屋を移動している。そしてお向かいの家も移動している。

いままた真向かいになったというこの家は「太陽」であってK(地球のほうがお向かいの家「太陽」を中心に回っている。しかし太陽もまた見かけ上、K(地球)の東から西へと回っているのである。

※大男が姿を見せたというのは陽が昇って来たという意味であり⑦老人たちはTreppe(階段)ではなくAufgang、日の出の意味だと思う。