監督官は、Kは横目でそれを見たと思ったが、彼の言葉に同意しているようでもあった。しかしそれとまったく同じように、彼はぜんぜん聞いてなぞいなかったのかもしれなかった。

※監督官は自分を含めた自分のルーツである、そこを踏まえればこの言葉の雰囲気も分かると思う。

 

というのは、彼は手を机にぴったり押しつけて、それぞれの指の長さを見比くらべているふうにも見えたからだ。府たちの監視人は飾り布で覆われたトランクに腰かけて膝小僧をこすっていた。三人の若い男たちは手を腰にあてて、あてもなくあたりを見回していた。どこかの忘れられた事務室のなかのように静かだった。

※どこかの/irgendeinem→irdisch.地上の、現世の

 忘れられた/vergessenen→vergehen/過ぎていく、終わる、運動する

 事務室/Bureau→Bilder/姿、写真、イメージ

 静か/still→stelle/位置、状態

《この行為は、こうしなければ、宙に浮いてしまう。つまり無重力である。つまり地上で運動する姿(イメージ)のような状態だった。》

 

「さて、みなさん!」とKは叫んだ。一瞬彼は自分がこの全員を両肩に担っているような気がした。

※全員/alle→宇宙、神羅万象

《一瞬彼は自分がこの宇宙を両肩に担っているような気がした。》

 

おたがい握手をして、事態に和解的な決着をつけるのが一番よさそうです。

※握手/Handerdruck→druker/力点、対象物

《握手と言うのは「あの世とこの世」の視点、力点ではないか。》

※和解的/versohnlichen→versohnung/罪の贖い

《事態は「罪の贖い」が終了したものと思われます、握手して向こう側(死界、冥界)へ行くのが一番よさそうです。

 

彼は監督官に歩より、手をさし出した。監督官は目をあげ唇を噛んで、さし出されたKの手を見た。

※ちょっと曖昧な記述である。立っているKのさし出した手が、座っている監督官の眼の位置より羅回ところにあるのだろうか?目をあげなければならないほど、先に無重力状態であると記したがKは浮遊しており、さし出したては監督官の目線よりずっと高い位置にあるのかもしれない。

 

ところがこっちは、立ちあがると、フロライン・ビュルストナーのベットの上に置かれていた固いまるい帽子をとりあげ、新しい帽子を試すときのように両手で用心ぶかくかぶったのだ。

※帽子/Hut→Herz/心

フロライン・ビュルストナーと言うのは、おとめ座、聖母マリア。つまり基督教の言い伝え、伝説をふまえたと。

 

①頭を枕につけたまま老婆は云々

②一瞬彼は自分がこの全員を両肩に担っているような気がした

③固いまるい帽子をとりあげ、新しい帽子を試すときのように両手で用心ぶかくかぶったのだ

①②③の意味するところはみんな同義である。ユダお罪に酔って世界を頭と背で支えている民族の屈辱的なすがたをさりげなくそれとわからぬほど軽い描写で暗示している。

④そこには切りだされた石がころがっていた。男たちはKを地面に座らせ石に凭れかからせ、頭を上向きにのせた。かれらが非常に苦心したにもかかわらず、また彼らの意のとおりにしようとKが努めたにもかかわらず、彼の姿勢は信じられぬぐらい無理なものだった(第10章より)

 

この4つの情景描写がユダの罪と言われるものから来ていることは間違いないと思う。(ダンテの『神曲』地獄編)

《一瞬彼は自分がこの全員(宇宙、神羅万象)を両肩に担っているような気がした》

Kは気がしただけである、監督官が固いまるい帽子(地球)をとりあげ、新しい帽子を試すときのように両手で用心深く被ったのである。要するのKの代わりに新しい帽子(ユダの罪による罰としての宇宙の重み)を被ったと。

 ゆえに監督官が立ちあがってからはとくに、ますます自分がここにいるすべての人びとの束縛から自由になっていくのを感じていたからだ、となるのである。