あなたの質問にはお答えするわけにはいかないとしても、

※あなたの質問→ぼくはだれによって告発されているのか、どういう裁判所が審理を行うのか。

 

「あなたが告発されているかどうかさえわたしは知らないんです。」(監督官)

「あんた逮捕されているんだから。」(大きい方の監視人)

「もう訴訟手続きはとられている。」訴訟手続き、あくまで手続き。

 

よく読むと、Kだけが「告発されているのか?」と言っている。第6章では「刑事訴訟なんです」とKは叔父の質問に答えている。どこにも刑事訴訟なんて説明は無く、Kのみが唐突に「刑事訴訟」だと言い切っている。

 そして遡って考えて見ると《ある朝、逮捕されたからである》という報告もK自身の語りである。

 

逮捕から告訴、告訴から刑事訴訟へと連鎖的に意識がずれ込んでいくが、読者は(はてな、そうだったかな。書いてあるのだから、そうなんだろう)と、こちらも疑問の余地なく根拠のない納得を自分に容認してしまうが、この潜在意識の中の意識の流れとも呼ぶべき発展をカフカは密かに指摘している。

そして自分は無罪だという感情でこんな騒ぎをひき起こさないでほしい。

 

※さわぎ/Larm/非常警報

「ベルを鳴らしましたね」ベルが先か、逮捕が先か・・・。

 

「だれかがヨーゼフ・Kを中傷したに違いなかった。なぜなら、なにも悪いことをした覚えがないのにある朝逮捕されたからである。」

 わたしたち読者はこの文章を鵜吞みにしている、だれかのせいで逮捕されたと。

 ことの因果関係、原因があって結果がある。逮捕の原因は《ベルを鳴らした自分にある》

そしてベルが先、云々出なく《原因と結果》は同時、表裏一体だと。

※ベルが鳴る/gelautet、この行為こそ『審判』では「死」の合図なのである。

しかし、そのベルは自分の意図(目的)とは異なる意味をもたらしたが、そのことに気づくはずもない。物事は偶然に支配されて起きるのだという暗示である。「だれか」が「自分」だなんて!

 

それから一般にしゃべるさいにはもっと控え目にすることですね。

※控え目/zuruckhaltan→zuruck/遡って

《それから一般にしゃべるさいにはもっと(過去に)遡って考えることですね。》