「あなたの着ている服を」ここで彼はフランツの方を向いた。「制服と呼ぼうとしてもむりで、それはむしろ旅行服といったものですからね。これらの疑問にたいしてぼくは明確な返答を要求します、これさえ明確にできれば、お互い心から握手をしてお別れできると確信していますよ。」
※旅行の最たるものは「放浪」フランツは放浪者となったユダ。これさえ明確にできれば、要するにこの「審判」の始まりであり、この『審判』を書く意味の発端である。
監督官はマッチ箱を机の上に放りだした。
・・・こちさら箱というからには何らかの意味があるに違いない。
※箱/schachtel→schachten/ユダヤ人の典礼に従って麻酔をかけずに屠殺する、schachter/ユダヤ人の屠殺者
〈監督官はマッチ箱を机の上に放り出した〉この行為は一見乱暴であるが、実は〈ユダヤ人の典礼に従って麻酔をかけずに屠殺する〉という意。
「あなたは非常な過ちを犯している」
※非常な過ち/Grossen Lrrtum→Gross Eltern/祖父母
「あなたは祖父母である」この言葉はKを支店として虚実、過去、未来という鏡の関係を即製する。なぜなら監察官その人が「Kの父・母・子」なる人でその人から「あなたは祖父母である」と言われたのだから。
「子供はないのかい?」「おまえだけだよ」と彼は言った。「お前が折れの一人子なのさ。おまえのためなればこそ、これをかぎりに航海をひきうけたので、あとは舟を売りはらい、働くのはよすとも」「この辺では、船客を子供と呼ぶのかい?」とぼくは訊いた。「そうとも、それが土地のならわしだ。そしてお客人らは、おらたちを父っつぁんと呼ぶのさ」(『断片』より)