自分の持ち物の裁量権はまだ彼の手中にあるらしかったが、彼はそんなものには重きをおいてなかったし、それよりもいまは自分の状況を明確に知ることのほうがはるかに大事だった。

※状況/Lage→Lager/手持品

 持ち物というのは精神のこと、まだ自由は自分の側にあるとしても、そんなことは論外だと。それよりも状況を明確に知るほうがはるかに大事であると。

 

二番目の監視人の腹が納戸でも、表向き親し気に彼につき当たってくるのだが、みあげればしかしかれのめにはいるのは、このでっかいからだにふさわしからぬ干からびて骨張った八の顔であり、たけだけしいわきにねじくれた鼻であり、その顔がかれの頭ごしにもう一人の監視人と内々で話をつけているところなのだ。

※腹/Bauch→Buch(本、聖書)

《そしてここは二重の意味でこの監視人は太陽(Kもフランツも太陽の化身)であるから腹、つまり球体の部分が地球に陽が昇り、また陽が沈むように、あたかも接触してくるようだと。

 でっかい、干からびた(水分がない)わきにねじくれた鼻、つまり全体が顔のような球体である。すなわち太陽、その顔が彼の頭ごしに云々というのは人は死ぬとみんな太陽になるのだからあちこちにぽっかりぽっかり浮かんでいるのかもしれない。》

 

雪におおわれた空を見上げるまでもなく、風景の色調だけで、まだ直接の日射しこそないが、陰影がすっかり薄れて消え去ろうとしていること、したがってこの理由だけからしても、ほかに証拠がなくても、やがて太陽がいたるところに燦然と輝くであろうことが、ひしひしと感じられることが有る。この場合の予感がちょうどそれに似て…『断片』より

 

彼は光ではなく、ただ、光りについて証しをするために来たのである。(第1章)

わたしは真理についてあかしをするために生まれ、またそのためにこの世に来たのである(第18章)ヨハネによる福音書より

 カフカは「人は死んで太陽(光)になると暗示している。

 

一体こいつらはどういう人間なんだろう?何のことを話し合っているんだろう?どんな役所に所属しているんだろう?

※役所/Behorde→(カトリック)省庁

いたるところに平和が支配し、法は厳然としてある。

※支配/herrschte→der Herr/神、unser Herr/わが主キリスト

 平和/Friede、Friede furst/平和の主、キリスト

 

彼は今度ばかりは監視人フランツを一目見た瞬間から、かたく決心していたのだった。

彼がこの男たちにたいしてもっているかもしれぬどんなわずかな利点でさえもいまは決して手離すまいと。

※利点/Vorteil→fortail/胎児

《彼がこの男たちにたいして持っているかもしれぬどんなわずかな利点とは何だろう。

天のお父様とユダにたいして持っている利点? それはまだ生きているということかも知れない。胎児ほどの生命であっても。

 いまは決して手離すまい→まだ死ねない、人としての証をたてるまでは!