見給え、其処に小さな料理屋がある。泣くのとも笑うのとも分からぬ声を振立ててわめく女の影法師が障子に映ている。外は夕闇がこめて、煙の臭とも土の臭ともわかち難き香が淀んでいる。大八車が二台三台と続て通る。その空車の轍が宜しく起りては絶え、絶えては起りしている。見給え、鍛冶工の前に二頭の駄馬が立ているその黒い影の横の方でニ三人男が何事をか密そ密そと話し合ているのを、鉄蹄の真赤になったのが鉄砧の上に置かれ、火花が夕闇を破て往来の中程めで飛んだ。話していた人々がどっと何事かを笑った。月が家並みの後ろの高い樫の梢まで昇ると、向こう片側の屋根が白ろんで来た。(本文より)
※料理屋/restaurant→restoration/回復、復元。
障子は生死
〈見給え〉と三回も呼び欠けているが、見えるのは、影法師、煙や土の臭い、香り、大八車(その空車)、二頭の駄馬、黒い影、横の方の二三人の男、火花、笑い声、月など。
影/shadow/幽霊/ゴースト
煙の臭いとも土の臭いとも・・・死後の〈火葬〉と〈土葬〉
大八車、ダイ/die
鍛冶工/カジ→カシ/仮死
二頭→二度(再び)、駄馬→タマ(魄/霊)
密そ密そ/undertones→undertalking/企て
真赤/red→redeemer/罪を贖う
夕闇/twilight、twiは二つ、二つの灯(世界)
往来/現世、中程/inter/埋葬する。
☆見給え、其処に小さな復活がある。泣くのとも笑うのとも分からぬ声を振立ててわめくの女の幻が生死を映している。(現世への出産か)
死霊が二つ三つと続て通る。宇宙の日々(人生)が騒がしく生まれては死に死んでは生まれている。
見給え、仮死の前に復活の霊が立ている。その見えない幽霊の横の方でニ三人の男が何事をか企てている。死の贖いが悲しみの上に置かれ、火の玉が二つの世界(現世と来世)を破て現世の埋葬所まで飛んだ。話していた人々から歓声が上がった。月が家並み尾の後ろの高い樫の梢まで昇ると、向8(現世、地球)片側(半分)は夜が明け染めて来た。