(三)
この章には《林》が三十二回、(二)では二十一回・・・。
林について独歩は《林は先祖の家なりき》と書いている。独歩は明治初期の人でありながら英語に堪能である。
①翻訳を生業とする②「文字は心の印象なれな也」という独歩のメッセージから考えて同音異義を想定したとしても不思議はない。
「林」・・・grove→grave=墓、あるいはglobe=地球を暗示しているのではないか。
☆林は先祖の家なりき(明治二十八年八月十一日)
☆嗚呼此の地球よ。地給よ、悠遠無窮の空明よりすれば爾は小なり。されど爾はたしかに人間の住家なり。而して埋葬所なり(明治二十八年四月二十日)
☆地球は幾億万の人血を吸えば満足するにや。何億町の人の人骨を食えば飽きたるにや(明治二十九年十一月二十四日)
これらから「林」は墓(先祖の家)だと。
武蔵野の林は楢の木は《奈落》を暗示しており、武蔵野は冥府、じごくではないか。
地獄とは「死者又は魔物の住む世界あり、それは生者の世界からは川とか坂で隔てられた遠いところか、地下の国である。
(六)ではしきりに水を、(七)では町外れ(縁、へり、hell)を、多摩川(魂川)、六つ玉川。(八)では川を、しかも四五年前、四五人、四五尺、と(四五)を何回も重ねて言う、つまり《死後》の暗示である。
(三)(四)(五)(六)は冥府、死の国を書き(七)(八)は地獄。※八はハチ、罰
(九)は武蔵野全域(冥府、地獄)の渾沌を書いたものと思う。
☆過去には過去の暗黒あり。未来には未来の暗黒謎語あり(明治二十六年八月三日)
「文字は心の印象なり」という独歩、繰り返される文字には心理的な仕事を感じる。