「こんな晩は君の領分だねェ」
※雨風、荒れ模様の天候/lowery→lower world
☆大津は幽霊ならばこそ「こんな晩は君の領分だねェ」(こんな晩は君(幽霊)の領分だねぇ)
「僕は世間の読者の積りで聴く、という秋山。
この『忘れえぬ人々』は他ならぬあきゃま自身のことなのではないか。
御愛の契もなければ義理もない、ほんの赤の他人であって、本来をいうと忘れて了うことのできない人がある。世間一般の者にそういう人があるとは言わないが少なくとも僕には有る。恐らく君にもあるだろう」
秋山は黙然て肯定いた。
①主人はこれを知ているのかいないのか、じっと眼をふさいでいる《亀屋の主人)
②大津は自分の書いた原稿を見つめたままじっと耳を傾けて夢見心地になった(大津)
③自分はこの淋しい島かげの小さな磯を漁っているこの人をじっと眺めていた(島影の人)
④僕らの方をみむきもしないで通ってゆくのを僕はじっと睇視めていた(壮漢・ワカモノ)
⑤しかし僕はじっとこの琵琶僧を眺めて(琵琶僧)
秋山は心のうちで、大津の今の顔、今の眼元は我が領分だなと思った。…秋山が大津をじっと見ていたのに違いないが登場人物の中でただ一人《じっと》という副詞がないのは何故か。