岸の子供らはまだトランクのことばかり云ひ船頭もしきりにそのトランクを見ながら船を滑らせました。波がぴたぴた云ひ船頭もしきりにそのトランクを見ながら船を滑らせました。波がぴたぴた云ひ針金の網はしんしんと鳴りました。それから西の雲の向ふに日が落ちたらしく波が俄に暗くなりました。向ふの岸に二人の人が待ってゐました。

 舟は岸に着きました。

※岸の子供ら→三途の川の子供たち、トランク/棺

 船頭/センドウ→先祖、二人の人→フタイノド/不退の土(極楽)

 舟/baat→亡(死人)渡すもの

 岸/coast→ghost/幽霊(幽界)

☆トランク(棺)にはお父さんお母さんではないかとすがるような思いで見送り、船頭(先祖)もしきりにそのトランク(棺)が気になったに違いありません。

 二人の人(不退の土/極楽)が待ってゐました。

 舟(死を渡すもの)は岸(幽界)に着きました。

 

「お待ぢ申して居りあんした。お荷物は。」

それは平太の家の下男でした。平太はだまって眼をぱちぱちさせながらトランクを渡しました。下男はまるでひどく気が立ってその大きな革トランクをしょいました。

 それから二人はうちの方への蚊のくんくん鳴く桑畑の中を歩きました。

※下男/カナン→火難、蚊/カ→火、気が立つ/excite,fire→火がつく。

 絵図/ezu→エンズ/怨図

☆下男(火難)は気が立って(火をつけて)絵図(怨図)をつめたトランク(棺)を極楽の岸(幽界)で燃やしてしまったんですね。