舟が又こっちへ戻るまで斉藤平太は大トランクを草におろし自分もどっかり腰をかけて汗をふきました。白の麻服のせなかも汗でぐちゃぐちゃ、草にはけむりのやうな穂が出てゐました、

※舟/boat(ボウト)→亡くなった人を渡すもの、又/ユウ→幽。大トランク→die/死のtruhe/柩。

 草/ソウ→想い、汗/カン→艱/悩み苦しみ、けむり/煙(エン)→縁、穂/スイ→誰。

☆舟(亡くなった人を渡すもの)が又(幽界)へ戻るまで斉藤平太は死の柩に想い悩み苦しみを拭いました。白の麻服(喪の心)の奥もぐちゃぐちゃ、草(想い)には誰かの縁(血のつながり)もありました。。

 

 いつの間にか子供らが麻ばたけの中や岸の砂原やあちこちから七八人集まってきました。

※七八人/なばりと読んで、隠れる=死ぬを暗示。

 麻/アサ→朝/morninng→mourning(哀悼)

 砂原/sand→sad/悲しみ。

☆いつの間にか哀悼・悲しみのなかから既に亡くなった子供らが集まってきました。

 

「おお、みんな革だんぞ。」

「牛の革だんぞ。」「あそごの曲った処ぁ牛の膝かぶの皮だな。」

 なるほどていたの大トランクの絞金の処には少し曲った膝の革切れもついてゐました。平太は子供らの云ふのを聞いて何とも云へず悲しい寂しい気がしてあぶなく泣かうとしました。」

※革/hide→隠れた、牛/ウシ→大人。

 膝/knee→kneel/ひざまずく。

☆賽の河原の子供、幼くして親に孝行を尽くせぬうちに死んだ子供はあの世に行けず賽の河原で供養の石を積んでいる。

「おお、みんな死人だぞ、大人の死人だぞ」「ひざまずく人もいるぞ」

 平太は子供らの云ふのを聞いて何とも云えず悲しい寂しい気がしてあぶなく泣こうとしました。