『旅行者用折り畳み品』

 レディ・メイド:アンダーウッド社タイプライターのカバー、高さ23㎝

 

 タイプライターのカバーであれば、当然中身がタイプライターであることは必置。

 入っているという思い込み、思い込みは思い込みでしかない。畳んであればともかく、入っていると確信させる形態で呈示している。(ような気がする)

 タイトルは『旅行者用折り畳み品』、畳んでないが折り畳み品だと明言している。微妙な違和感、軋轢(摩擦)の不信。

 しかも旅行者用と限定しているが、この意味を確実にする証しは無い。

 

 つまり、タイトルはボンヤリ(雰囲気/曖昧)している。肯定も否定も必要とせず《ただ在るがまま》の風袋(呈示物)であり、決定を促すものでもない。(だから何?)という疑惑に対する答えも見つからない。

《ただ在るがまま》なのである。

 鑑賞者は凝視の果てにタイプライターのカバーはタイプライターのカバーに過ぎない事実に思い至ることで黙認し通り過ぎていく。

 《ただ在ること》の意味、旅行者用という修飾は無駄であることに気づく。必然性のなさは虚無である。(しかし、銘打っているからには・・・という惑い)

 思い込みの軽重、物体(対象物)には浮遊する観念的ともいえる修飾の付随があり、体験的データはそれを阻まない。

 

 写真は『DUCHAMP』TASCHENより