『秘められたる音』

 修正レディ・メイド:ネジ留めされ真鍮板で挟まれた紐の玉、動かすことによって音、12.9×13×11.4㎝

 

 動かすことによって音、とある。音は(物体の振動が空気を振動させて伝わる波)

『秘められたる音』のタイトルは微妙に音の範疇を広くしている。秘めているのだから音は聞こえないが、(音はある)ということなのか、この作品を触る、もしくは動かせば振動によって生じる音(可能性)はある・・・。(振動数2万ヘルツ以上の超音波や15ヘルツ以下の音波は人に耳に感じない)

 

 音は振動で伝わる波であれば、縄でぐるぐる巻きに封鎖すれば音が封鎖されるものでもない。そして、防音壁のなかに確かな振動の発信源がなければ音は外部に漏れない、だから秘められたる音なのか。

 

 『秘められたる音』はあたかも音があるという前提条件を醸しているが、震源がなければ音は生じない。

 (心理的な対象物とタイトル)によって鑑賞者は《音》という不可視なものの実態に迫ろうとする。

(決して無いこと)は(もしかしたら有ること)に等しいのではないかという疑惑。

 存在への問いである。

 

 写真は『DUCHAMP』TASCHENより